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……こいつのこーゆう所が嫌いだ。昔っからそうだ。僕のやる事成すこと、あえて口出しはしませんがと前置きを置きながら結局は全面否定してきやがる。
どうせ俺がこうやって言った所で……。
「坊ちゃん」
「なんだ」
「弁えるのは貴方、ですよ」
「……なんだと?」
「この屋敷を旦那様よりお預かりし、管理しているのは私です。そこに貴方はお住いなのです」
「なにが、いいた……」
言い切る前にバンッと音をたてて有栖の掌がテーブルに落とされる。
「旦那様の息子というだけで賃料も何も払うこと無く勝手に居座ってる方が何を偉そうな口を叩いておられるのですか?」
はあ? 言うにことかいてこいつ……っ。
「僕は鷹塔家の一人息子で……っ」
「それが、何か?」
「は?」
「それが、何か。と申し上げています」
「何か、って……」
お前の雇い主は僕の親父で、僕はその親父の一人息子で跡取りで……それ以外に何があるってんだ。それ以上のものなんて。
脳内に次々浮かぶその言葉のどれをこいつに言い返してやろうかと迷っていると、有栖はもう片方空いてる掌も同じ様にバンッとテーブルの上についた。
背中にはテーブル。前には有栖。その2つに挟まれる様に中心に僕の身体が置かれる。
「有栖。貴方は何か勘違いをしておられる様だ」
「かん……違い?」
目を細めながらスッと有栖の顔が近付いてくる。吐息が掛かりそうなくらいの距離まで近付くとねめつける様に少し上から俺を見た。
「確かに貴方は我が鷹塔の一人息子であり跡取り息子。将来この家の旦那様になるお方です。ですが、それは将来の話。今は親の築いた権力を自分の物と勘違いして周りを振り回すただのクソガキだという事をお忘れずに」
「なっ……」
「さ、早く食事を済ませて下さい。私は貴方と違って忙しい身です。貴方に餌を与えた後やる事が沢山あります」
小馬鹿にする様な口調でそう言った後、離れていく顔。その余裕綽々の態度にイラついて今度はこちらから睨み上げるが、有栖にはそんな物通用するわけもなく。
せめてもの反抗だとテーブルクロスを引っ張り抜いて並べられた料理を全部床に叩きつけると、呆れの溜息をつく有栖を背に部屋へと戻った__。