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策士流プロポーズ
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空には雲一つ見当たらないぐらいの快晴だ。穏やかな気候で出かけるにはピッタリだ。
だけど、私は本やおかしなものがたくさん置いてある部屋を掃除している。しかも、ここは自分の部屋ではない。
「おや花蓮、片付けてくれていたんですか。」
本を運んでいたらこの部屋の主である、天蓬さんが悪びれた様子もなく帰ってきた。
「少しくらい自分で掃除してくださいよ。」
「いや〜。なかなか自分じゃ掃除しようって気にならなくて…。一応どこになにがあるかくらいは把握してるんですけどね。」
こないだ書類に押す印鑑無くしてたのはどこのどなたでしたっけ。って言おうと思ったけど、めんどくさくなりそうな気がしたのでやめた。
「お、来てたのか。ってまた部屋の片付けかよ。」
扉が開いたので誰かと思ったら捲簾さんだ。
「たくっ…。この間俺が掃除したとこなのにまた更に散らかってんじゃねぇか。」
「下界で面白いものを拾いましたし。あと書庫で面白い本も借りましたからね。」
「返す気ねぇだろが。花蓮も大変だな。」
「いえいえ、これが仕事ですから。あ、そうだ。はい。これよかったら。」
私はさっき作っておいたコーヒーを捲簾さんに差し出す。
「気が利くねぇ。前から思ってたけど、きっといい嫁さんになれるぜ。」
「え?え?」
私は思わず手に持っていた本を落としてしまった。
「いきなり何言い出すんですか捲簾。僕も同感ですけどね。」
床に落とした本を拾いながら同意する天蓬さん。私はようやく思考が追いついてきた。
「何ですか2人ともいきなり…。」
「ルックスもいいし、家事だってこなせるし、言うことなしだしな。」
「いい相手いないんですか?」
「何なら俺でもいいけど?いつでも待ってるぜ。」
肩に手を回そうとした捲簾さんの手を払いのけて私は声を大にして言い放った。
「これから用事があったんでした!!それじゃ!!」
私は荒々しく扉を閉めて出て行った。用事があるなんてのはもちろん嘘である。全くもう…!!
「あーあ。もうからかいすぎですよ。花蓮出て行っちゃったじゃないですか。」
「便乗してきたくせに。見てて面白いからついつい」
「まぁ、気持ちはわかりますけどね。」
天蓬は煙草をふかし始めた。捲簾も煙草を取り出して火をつける。
「あ、これ花蓮のじゃね。」
天蓬の机の上に彼女の財布と思われる物が置かれていた。
「しょうがないですね。僕が届けてきましょう。」
「へいへい。行ってらっしゃい。」
財布持って出て行った天蓬。1人残った捲簾は煙草の火を消して、部屋を見渡す。どうやら掃除はまだまだ終わってないらしい。
することもないので花蓮の代わりに掃除を続行しようとした時、また扉が開いた。
「何だよ?」
扉の先には天蓬がいた。天蓬は真剣な面持ちである。
「念のため確認ですけど、さっきあなたが花蓮に言ったことは本気じゃないですよね。」
「え?あぁ、俺んとこに来るって話?もし、本気だって言ったらどうする?」
「それはそれで別にいいんですけどね。それなら僕は本気であなたと勝負すればいいだけですから。まぁ、恋愛に関してはそちらのほうが有利かもしれませんが。」
「冗談に決まってんだろ。それに端から俺に勝ち目なんてねーよ。」
「そうですかね?じゃあ今度こそ僕は行ってきます。」
「早く行ってこい!!」