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トリッパーの憂鬱
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「…みのり姉、ありがとうございます、もう大丈夫です」
『そう?また辛くなったら言うんだよ?』
「はい、わかりました」
そんな会話をして、三郎くんが落ち着いたみたいなので私は朝食作りを再開した
三郎くんには、目を冷やしに行ってもらった
一郎くんは何となく察してくれそうだけど、二郎くんにはからかわれそうだし
きっとちゃんと話せばバカ野郎って言って慰めてくれるんだろうけどね
二郎くんも一郎くんも良い子だから
そんなことを考えながら調理していると、二郎くんが起きてきた
「ふわぁ…姉ちゃん、おはよー」
『ふふ、おはよう、二郎くん。寝癖付いてるよ?』
「えっ、マジ!?」
『マジマジ。ほら、ちょっとこっち来て』
一旦火を止めるとこちらまで来てもらい、二郎くんの髪の毛を触った
『…わぁ、二郎くんの髪の毛ってふわふわなんだね』
「…な、なんだよそれ…」
二郎くんの声に照れが混じる
『ん?だって、二郎くんの髪の毛ってつんつんしてるから、固いのかなーって思ってたから』
「…癖毛なだけだよ」
『あ、動かないで!』
「お、おう…」
二郎くんを含め山田家はみんな(他も)身長が高いから、私は立ったまま二郎くんになにかをするときはかがんでもらうのである
『…はい、できた』
「お、おう、あんがと…」
『ふふ、いいえ。もうすぐ朝御飯出来るからね』
「おう」
なんだか二郎くんの顔は赤かった
今日は珍しく最後に起きてきた一郎くん
「わりぃ!目覚ましが鳴らなくてよ!」
『ふふ、大丈夫だよ。にしても一郎くんにしては珍しいね?』
とわたしが問いかけると、一郎くんは少し考えてから苦笑した
「んー…。…姉ちゃんが来てから少し気が緩んでんのかもな。気合い入れ直さねぇと」
『一郎くん…』
それは私からしたらとても嬉しい言葉だ
でも、いついなくなってしまうかわからない私を、拠り所にしてはいけない。
それは、言いたくても言えなかった
『…さ、ご飯が冷めちゃうから早く食べよ!』
私はパッと気を取り直し笑みを浮かべて器にご飯を盛った
トリッパーの憂鬱
(私は何時までいられるんだろう…)