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promise(直也夢)
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「ボク、大きくなったら
優津羽と結婚する‼︎」
幼馴染の直也は
小さい頃から
そんな事を言っていた。
結婚の意味なんて知らないし
けど、嬉しいようなくすぐったいような
そんな感情だったのは覚えてる。
告白なんてしてないし
された事もなかったけど
ずっと傍にいてくれた。
いつも優しくて、
凹んだ時は励ましてくれて
永遠に一緒にいられるって
確信はないにしても
どこか信じていた。
けど、それは
一瞬で崩された。
高校生になって
夏休みが近づこうとしていたある日。
「優津羽ごめん。
今日で別れよう。
普通の幼馴染に戻ろう…?」
そう言われた。
その日を境に
直也が欠席する日が増えて、
夏休みが明けた頃には
まったく会わなくなっていた。
そんなある日の朝、
学校に行く準備をして
家から出ようとしたら
お母さんに呼び止められた。
「優津羽、
今日は学校に行かなくて良いから
直也くんのもとに行ってあげなさい」って。
お母さんは
直也のお母さんとも仲が良いし、
私が直也の事を好きなのも
直也と付き合っていたのも知ってる。
だから教えてくれたのかもしれない。
けど、何のことか分からず
メモ書きを持たされて家を出た。
そこに書いてあったのは
病院の名前と部屋の番号。
多分、
ここに行けば
直也に会えるのかもしれない。
会いたいような会いたくないような
そんな感情が、
私の中で渦を巻いた。
病室に行くと
酸素呼吸器はしていたものの、
直也は元気そうに見えた。
「かっこ悪いから
おばさんには伝えないで下さいって
お願いしたのに」って
少し恥ずかしそうに話す直也。
気のせいか
少し痩せた気がする…。
そのあとは
「学校ではどうなの?
好きな人できた?」って
聞かれて会話をしたけど
どこか悲しそうな顔をしていた。
好きな人なんて
直也以外いないよ…。
私の初恋だったから…。
時間がある時は
ほぼ毎日お見舞いに行った。
その日にあった
面白い事とかを話して
一緒に笑ったりなんかもした。
それから体力も回復しつつあったのか、
帰り際、ナースさんから
一時退院の話を聞いたけど
それから一週間後、
容体が急変…。
1ヶ月しない内に
旅立ってしまった…。
最後に会話をしたのは、
「俺、生まれ変わっても
ぜったい優津羽を見つけるから。
だから俺と結婚して?」って
息も絶え絶えで、力なく言っていた。
嬉しかったけど、
その瞬間が辛かった。
私と出逢っていなかったら
余計な事考えなくて済んだのにね…。
直也のお母さんたちと一緒に
病室の片付けをしていたら
引き出しから手紙らしきものが出てきた。
それはもちろん、私宛。
《優津羽へ
直接言うのは恥ずかしいから
手紙にしました。
身勝手な俺のせいで
勝手に別れを告げてごめんな。
これを見る頃には
もう俺はこの世にいないと思う。
俺が普通の体だったら
優津羽に別れを告げる事は
なかったと思う。
実は俺、
生まれつき持病持ちだったんだ、
言ってなくてごめんな。
けど、俺が心から愛したのは
きっとこの先、生まれ変わっても
優津羽、お前だけだから。
だから、生まれ変わったら
ぜったい優津羽を探してみせるから
その時は俺と結婚して下さい。
けど、もし素敵な人が現れたら
その人と幸せになってほしい。
優津羽の幸せが
俺の幸せでもあるから。
あともう1つ、間違っても
俺のあとなんか追ってくるなよ?
俺が生きられなかった分を
優津羽には生きてほしい。
それじゃまたな。
浦田直也より》
読み終わる頃には
涙で視界がボヤけて
それどころじゃなかった。
けど、ぜったい忘れない。
この先、素敵な人が現れて
結婚をして家庭を持ったとしても
ずっとずっと直也を愛してる…。