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奏-Kanade☆°(隆弘夢)
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ー 俺、東京で歌手になる。
小さい頃から何かある度に
口癖みたいに言っていたね。
小さい頃から一緒に成長してきて、
付き合ってるわけじゃないけど
自然と手を繋いでくれて、
泣いてる時も、
いつもそばに居てくれた。
その優しさが
嬉しかったけど、
ちょっと痛かったんだ。
「悲しそうな顔すんなよ」って
優しい笑顔で言ってくれる隆弘くん。
くしゃくしゃって
その大きい手が、
私の髪を少し乱暴に
撫でていく。
行かないでって思う反面、
夢に向かって突っ走っていく彼が
どこか誇らしく思えた。
「いつか…
いつか大きなステージに立てた時、
絶対、ーー…るから」
肝心なところが
ベルの音と
扉が閉まる音でかき消されて
聞き取れなかった。
最後の言葉だって
唇を読んで理解しただけ。
頑張って夢を叶え続けてね。
私もいつか、
その夢を支えられるぐらい
成長したら
隆弘くんに会いにいくからね。