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03
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躰を支配する高温に、嫌でも意識が覚醒してしまった。
ぼんやりする思考の中で「また、熱が出たのか」と何度目か解らぬため息をつく。
「疲れが出たんじゃないのかな」
ドアの開く音に頭を向ければ、りゅうが携帯を片手に入って来る。
『……』
そうかも、なんて軽口をたたく体力も無く出たのは喉を吹き抜けるヒュウと言う音だけ。
いつの間にベッドに運ばれたのやら、脇に腰掛けて横たわる僕を覗き込むりゅう。
「辛いよね…」
そっと右頬を包まれる。微かに冷たく感じる手の平。りゅうの温かな体温は何処に消えてしまったのだろう。
”辛くないか?”という疑問ではなく、添ってくれる言葉に小さく首を振る。
こんなの平気だよ、大丈夫だから……そんな顔しないで。
「(名前)、やっぱり病院に行こう。おばさんに電話してこの近くの主治医探して貰ったから」
『……』
「点滴うって、元気になったらまた此処に帰ってこよう」
『……』
優しく、頭を撫でられながら頷いた。
それからなるべく此方の負担にならない様に丁寧に持ち上げられ、車まで運ばれる。
外はすっかり真っ暗で、既に日は落ちてしまったのだと知った。
つまり、りゅうが仕事に行ってる間に熱を出してそのまま気を失ったのかな。
流れる街灯の明かりを上の空に眺めながら、気分を落ち着けようと試みる。
『ケホッ』
肺が苦しい。苦しくない。苦しくない、大丈夫、大丈夫。
りゅうが側に居るから。辛くない。
「すぐ着くから」
信号待ちの短い間でも背中をさすってくれる。
何でだろう、りゅうの前じゃあ我慢もままならないなんて。