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04
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嫌でも嗅ぎなれた匂いが鼻を突く。
アルコールの消毒の匂いだ。
病院は嫌い、と言うよりも飽いてなしまった。
心外にも帰国初日起こした発作が重かったらしく、安静を叩きつけられていたがこんなに安静ばっかりしていたら折角ついた体力が無くなってしまう。
呼吸器を鼻下に付けたまま車椅子で中庭を目指す。
病院なのでりゅうとも連絡が安易に取れる筈もなく、体調が良い日は暇を持て余している。
日当たりの良い場所に車椅子を落ち着け、うつらうつらしていればぬぅっと伸びてきた小さな手にビクつく。
「おにーちゃんもびょーきなの?」
同じく呼吸器をつけたままの少年と少女。
成る程、此処はこの子達の唯一な遊び場だったのかも知れない。
『ええ、』
見つめてくる真っ直ぐな瞳には邪気も何もない。本当、子供は素直で好きだ。
『そうかも……、知れないですね』