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(Side:龍之介)
「面会出来ない……ですか?」
連絡を取れなくなって4日目。比較的仕事が早く終わった俺は、(名前)の病院に足を運んだが面会を拒否されてしまった。
受付で呆然と立ちすくんでいれば、(名前)の担当である看護師さんが偶然通りかかった。
「十束さんここ数日病状が悪化してて、食事しても嘔吐してしまったりしていまして」
「……起き上がるのも辛そうでしたか?」
「そうですね、今は上体を起こすのもままならなくて」
返事が返って来ない理由は大体、(名前)が隠したい時だ。
そもそも携帯で打ち込む気力すら無い程に衰弱しているのかもしれない。
だとすれば、何時から苦しんで居たのだろうか?今は安静に寝ているのか、そんな不安ばかりがぐるぐると頭を過る。
それ以後、看護師さんの話は全て耳に入ってこなかった。
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(Side:IDOLiSH7)
時流の風は今、まさに吹いている。
一織の提案は借金を積んででも、野外ライブを再び行おうと言うものだった。
ステージが広いだけ観客席の数も多く3000人がライブを楽しめるものの、最初のライブでは9人と言う二桁の数にも満たない観客数だったためにメンバーの晴れない表情をした。
「大コケ」のキーワードが出る度にマネージャーである小鳥遊紡の胃が悲鳴を上げるのだった。
「大コケライブ」の話をした後、マネージャーが大神万里に用があると出て行くのを節目にメンバーはダンスの練習を再開する。
太陽が沈みきって辺りが暗闇に包まれ始めた頃、レッスンは終了した。
各々水分を補給したり、タオルで汗を拭いたり、環に至ってはぐでーっと床に突っ伏していた。
恐らく彼の体は水分よりも王様プリンを欲しているに違いない。
「モップみたいになってんぞ」と大和が笑いながら、ペットボトルを差し出すのを横目に壮五は水を飲み干している陸に声を掛けた。
「陸くん、体調は平気?」
「はい。もうすっかり大丈夫です」
「もう無茶しちゃ駄目だよ」
「分かってます」
眉を下げて困った様に笑った壮五に、陸は心配させてしまった申し訳無さを感じざるを得なかった。
壮五だけでは無い、前回の野外ライブではメンバー全員に心配を掛けてしまった陸はシュンとしながら「ごめんなさい」と子犬のように瞳を潤めて呟いた。
(かわいい……)
そんな姿を遠目に見ていた一織は不覚にもキュンとしてしまった。
__キュンってなんだ!違う違う!!
焦りをぶつけるようにマナーモードだった携帯のロックをスライドで解除して見下ろした。
「え?」