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『僕を…、知ってるのですか?』
「ええ、まぁ。クラッシックには疎いが、一応は知ってますよ」
『……』
にこにこと人の良さそうな笑みを浮かべるその人に、引っ掛かりを覚えた。
何処かで会ったことが有るような既視感。月明かりに照らされる中で対峙する彼のレンズ越しの瞳にどうも胸騒ぎがした。
『貴方は…__』
__もしかして、
「あ゛ーーーーーッ!!!!」
『ひッ!』
突如背後から聞こえた絶叫に、情けなくも身を縮こませる。
(え…、え。)
「おいおいタマ、いま夜中」
「ヤマさん!俺がトイレしている間にいなくなるなよ!すげー怖かったじゃん!!」
「おまえもいい歳だろ?夜中に一人でトイレ行けないとかマジねぇから。折角お兄さんからの試練を与えてやったのに」
「普通にこえーし、オバケ出たらどうするんだよ!」
「出ねぇって」
「いや出るから!」
お、おばけ?_え?
そっちのけで口論を繰り広げる2人に目を白黒させる。
……それにしてもこの子、背が大きいなぁ。りゅうくらいあるかな?
「てか、あんた誰?」
ふと思い出したかのように指を刺される。眼鏡の人が「おいこらタマ」と確かに青筋を立てていた。
『あ、……十束(名前)、です』
「ふーん」
さも興味が無さそうな彼は僕の名前を聞くなり、大きな欠伸を1つこぼして「ヤマさん、帰ろー」とぐいぐい眼鏡の人の腕を引っ張り始めた。大きな子供みたいだなぁ、と思っていれば眼鏡の人は「俺はこの人に用がある」と言ったのだった。
_僕、初対面なのですけど…。
「あんた、リクとソウ_七瀬陸と逢坂壮五と顔見知りですよね?」
彼の口から出た2つの名前は、僕の知る名だった。この人は彼らと何の関係があるのだろう?
「そーなの?」
『ええ、陸君は病院で、壮五君とはレコード店で知り合いましたけど…』
「うちのメンバーがお世話になってます。結構ラビチャでやり取りしてるそうじゃないですか」
『メンバー…?あっ、IDOLiSH7のお二方でしたか?』
「そーゆーコト。タマ、この間ソウが差し入れに持って来たプリンあるだろ?この人はそれをくれた人だ」
「マジで!?あれちょーウマかった!!もっかい食いたい!」
「どこで買ったの?」と、これまでの気だるけな雰囲気とは打って変わって目を爛々と光らせる、たま?君。両肩をがっしり捕まれた。
拍子に息が詰まって、よろけてしまった。_ああ、忘れていたな。夜風に当たり過ぎたのかもしれない。ぐにゃりと目の前の顔が歪んでいく、視界に酔う。
「_!十束さん!」