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彼は私の教育係の男の弟だった。知識に長け、けれど武術はからっきしだった兄。反対に、知識は兄程ではなかったが武術に関しては他のどの武僧よりも長けていた弟。
彼らは私が産まれると同時に先代巫女から側近の任を与えられたという。
私達はいつも3人一緒だった。けれど、いつからだっただろう。セルノヴァと#Name_3#が度々口論する場面に出会う事があった。
それは決まって私が#Name_3#に錬丹術を教えて貰っている時だった。
『兄者! 巫女にその様な物を教えるなど何を考えている!? 呼び名は違っていてもそれは我らイシュヴァラが禁忌としている錬金術ではないのか』
『それは違う。錬丹術は遠くシンの国では医療行為に使われる技術だよ。歴代巫女はこの力で民の薬を精製したり怪我をした同胞の手当てをしてきた。必要なものだ』
『だが、しかし……っ』
実際私はその錬丹術で薬草から薬を精製するのを得意としていた。他には緑が枯れ荒野になった場所へ種を蒔き芽吹きを誘発し森を復活させる。だから私は〝息吹〟の二つ名くだされたのだ。
『いつかその力は争いの種になる。自然を操る力など……』
『だから我ら側近がいるんだ。知識を持って正しき道を示し、武を持って強い心を教える。そうだろう?』
『…………』
『大丈夫だよ。我らが巫女は真っ直ぐなよい巫女へと育っておいでだ。彼女を信じれないのか?』
そう笑う彼にセルノヴァもそれ以上言い返す事はしなかった。#Name_3#はいつも私を信じてくれた。己が正しいと思う道をゆきなさい、と。
セルノヴァは彼より厳しかったけれど、それは私を思っての事だとわかっていたから。
私は彼らが大好きだった。