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理事長室の前に立ち、ひとつ深呼吸。そしてノックを3回、返事が来るのを待って扉を開ける。
「失礼します……お呼びでしょうか、理事長先生」
背筋を伸ばし、部屋の主と相対する。
「……東西南北さん、キミに少し尋ねたいことがありまして。そんなところにいないでどうぞこちらに」
ドア付近に立つ私を自分の側──机の前に呼びつける理事長。
笑顔を見せるが、その瞳は暗く冷たかった。
「……今日キミを呼びつけたのはね。コ「失礼します、理事長」
理事長の言葉を遮るようにドアが開かれ、乱入したのは
「……浅野くん。君を呼んだ覚えはないのだが?」
学年首席、生徒会長の浅野学秀だった。
「……A組の者がわざわざ理事長に呼ばれたのです。A組の長たる僕も出向くのが礼儀かと?」
そう、理事長に詭弁をまくしたてこの場に居座ろうとする浅野くん。
「……まぁ、良いでしょう。キミも呼びつけようと思っていたのでね。手間が省けた。東西南北さん、キミに少し尋ねたいことがあってね──コレについてだ」
そう言って机に広げられたのは今日、返される予定の3学期期末テストの答案用紙。
正答誤答問わず朱が入るはずのその答案は───白紙だった。
隣に立つ浅野くんの息を呑む音が聞こえた。
「……コレについて君の意図を説明してください」
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