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「…………そう言えば、父さんは?」
私の隣の席に置いてあるフードカバーをチラリと見てお味噌汁を啜る兄さん。
「さぁ……何処かのお偉い様方と会食でしょうか?特に連絡もなかったので作ってしまいました。あ、足りませんでした?お代わりはまだありますよ」
「いや、食べなかったら勿体無いと思ってね」
「大丈夫ですよ、兄さん。残ったら明日のお弁当のおかずになるだけです」
「……そう言うものか」
「はい」
兄さんにしては曖昧な返事をして休めていた箸を動かした。
「あ、兄さん。もし良ければ手伝います」
部屋に戻ろうとする兄さんを呼び止める。
どうせ責任感の強い兄さんの事だから仕事を持って帰って来たはず。
「別にそういう意味で話したわけじゃない」
強がっちゃってまぁ、可愛らしい。
「学校ではそうそう関わることがないですから……ね?」
少なからず、迷惑をかけているのだ。出来ることはしたい。
「……分かった」
「ありがとうございます」
渋々、というふうに頷く兄に笑顔で応えた。
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