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「渚。私E組来てから日が浅いから知らないんだけど、彼どんなひとなの?」
コソリとやってくる茅野。
「……うん。1年2年が同じクラスだったんだけど、2年の時続けざまに暴力沙汰で停学食らって…このE組にはそういう生徒も落されるんだ。でも……今この場じゃ優等生かも知れない」
「……?どういう事?」
「凶器とか騙まし討ちの〝基礎〟なら……多分カルマ君が群を抜いてる」
「あー………そういう事なら否定できませんね」
側にいた東西南北さんが同意する。
え、東西南北さんずっとA組だったからカルマくんのこと知らないはずじゃ………
「東西南北さんカルマくんのこと知ってるの?」
「まぁ……茅野さんはご存知ないかと思いますが、こう見えて私生徒会副会長を任されていましたので……生徒の情報はある程度入っていました。被害…加害者?にもみ消ゲフンッ……穏便に済ませていただくようお願いに行っていたりしましたから」
今、もみ消しって言ったよね!?言ったよねぇぇぇ!?そんな生徒会の闇聞きたくなかった!!
あと一瞬被害者って言った!?被害者か加害者かわからないってことだよね!?
「へ、へえー…そ、そうなんだー」
「え!東西南北さん生徒会副会長だったの!?」
え、茅野動じなさすぎ……
「元生徒会副会長です。3月末付で解に「學瀬じゃーん!久しぶりー!」ひゃあっ!!?」
スルリと東西南北さんに近づくカルマくん。ちなみに、左手は東西南北さんの腰に回ってる。
「てかさーなぁーんでE組になんていんのー?会長くんのお守りしてなくていいわけー?まぁ俺としては一緒にいれるから良いんだけどさ!」
「……離れて下さい。会長の補佐は他にもいますから大丈夫かと。それに赤羽くんはご存知ないかと思いますが、私3月末日付けで副会長を解任されていますので」
動揺も一瞬。素早くカルマくんの左手の甲を抓ってその拘束から逃れる。
「ふーんそーなんだ……興味ないけど」
「………ッ 本当に、貴方という人は。人の神経を逆撫でする事がお得意ですね。大体、貴方が暴力沙汰など起こさなければ生徒会の──私の仕事が少なくて済んでいたんですよ。それを貴方は期間を置かずに暴力沙汰を起こすし巧妙に証拠隠滅するし…………今さらそんな事言っても後の祭りですね。茅野さん、戻りましょう。着替える時間がなくなりますよ」
笑顔でツラツラと文句を言う東西南北さん。笑顔なのにひやりとした空気が流れる。
なんか、何処かで感じたことのある冷たさだった。
「あ!うん、そうだね!行こ!」
途中で冷静になった東西南北さんは茅野と一緒に更衣室に行ってしまった。
「……カルマくん、東西南北さんと知り合いなんだ?」
「んーまぁねー?學瀬ってさ……弄りがいあって良いよね」
そして、戻ってきて良かったと彼は続ける。
「……あんな面白いオモチャ、滅多ない」
端整な顔になっている形の良い口が三日月に妖しく歪んだ。