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二択の時間
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―1時間目・数学―
「どうしてもこの数字が余ってしまう!そんな割り切れないお悩みを持つあなた!!でも大丈夫ピッタリの方法を用意しました!!黒板に書くので皆で一緒に解いてみましょう」
「………」
皆が黒板に向かっている横で赤羽くんが銃を取り出す。
「───……でこれを全部カッコ良くまとめちゃってそれから…………するとあらビックリ!………となります。………ああ、カルマ君。銃を抜いて撃つまでが遅すぎますよ。ヒマだったのでネイルアートを入れときました」
「……!!」
赤羽くんが引き金を引く前に彼の爪ににネイルを施す殺せんせー。
デザインは……ダサいの一言だった。あればはっきり行って迷惑甚だしいな。無駄に立体ネイルを施しているし……
そんなこんなで2時間目、3時間目も失敗に終わった。
―4時間目・技術家庭科―
「不破さんの班は出来ましたか?」
「………うーんどうだろ。なんか味トゲトゲしてんだよね」
「どれどれ」
「……へえ。じゃあ作り直したら?────1回捨ててさ」
と鍋をひっくり返す赤羽くん。
隙を作るとは言え、鍋はひっくり返しちゃいけないと思う。掃除大変だし……
「わっ」
「!!」
「エプロンを忘れてますよカルマ君。スープならご心配なく全部空中でスポイトで吸っておきました。ついでに砂糖も加えてね」
とナイフを持った赤羽くんに花柄のエプロンをつける殺せんせー。随分とファンシーな柄をお持ちで。
そもそもスポイトで吸う必要は無かったのでは……?
「……手際良いね、東西南北さん」
気を取られていると横から速水さんに覗かれた。
「え?あぁ……慣れてますから。はい、速水さん奥田さん味見してください。味の修正します」
小皿にスープを取り分けて2人に渡す。
「!美味しい……」
「うん、でももう少し胡椒入れても良いかも」
「分かりました。もう少し胡椒入れてみます。あ、千葉くん。洗い物はそれほどにして器、用意お願いします」
「ん、わかった」
こちらの班はこちらの班で仕上げをする。……うん、最初の設定時間には席につけるかな。
………赤羽くんの分は残してあるけどよそらない。働かざる者食うべからず、だからね!決してイジメではないよ。
―5時間目・国語―
お昼休みを挟んで迎えた5時間目。
赤羽くんは懲りずに殺せんせーに殺気を向ける。
あーあ、それじゃ無理だね。
殺せんせーはなんでも出来るけどけっこう弱点が多い。ちょいちょいドジ踏むし、慌てた時はテンパるし反応速度も人並みに落ちる。……けど、
「〝私がそんな事を考えている間にも──赤蛙はまた失敗して戻って来た。私はそろそろ退屈し始めていた私は道路からいくつかの石を拾ってきて───〟」
ナイフを振りかぶる赤羽くんを教科書を朗読しながら躱して赤羽くんの髪の毛をセットする殺せんせー。
どんなに不意打ちに長けていても、各国が狙い、未だ暗殺の出来ないターゲット。
本気で警戒してる先生の前で暗殺なんて無理にも程がある。
………まぁ、私には関係のない話だけど。
───そして、終業を告げるチャイムが鳴る。