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学園祭5
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「ケセセセ!みんな楽しんでるか?!小鳥のようにカッコイイ俺様が告知するから耳の穴かっぽじってよーく聞けよ!いいか、今からグラウンドの特設ステージで漫研と生徒会の有志による歌とダンスのパフォーマンスショーが行われるぜ!マジ天使なフェリちゃんや俺様の可愛い弟が出るから要チェックな!会場にはすでにたくさんのお客サマが集まってっからお早めに…っておい!まだ俺様がしゃべってんだろ!ちょ、マイクかえs…」
「う…なにこの放送…」
「お、起きた。」
やたら騒がしい校内放送に目を覚ますと、隣で香くんが缶コーヒーを片手にいつものように携帯をいじっていた。
どうやらほぼ徹夜明けの私はあのままマジ寝してしまっていたらしい。
真ん中より少し西に傾いた太陽が時間の経過を示していた。
「あーあ、あと一歩で宇宙だったのになぁ…おのれ光秀…!」
「どんな夢見てたんだよ的な。」
まだ完全に覚醒しきっていない私に、香くんは今まで自分が飲んでいたコーヒーの缶を私の頬に押し当てた。ほんのり暖かい缶が少し冷えてしまった体に心地いい。
…というか。
「え、コレ…」
「俺の口には合わないからあげる。」
「あ、どうも…っていや、でもこれって…」
間接キッスってやつではないんですか…!
なんて思ったら一気に目が覚めた。いやいや、同性同士だったらなにも問題ないけど私は女で香くんは男なわけで。
「それ飲んで目覚ましてアーサーの黒歴史でも見に行こう。」
「……。」
だけど彼がごく自然にそれを差し出してきたものだから。
変に意識するのもなんだかなぁって気になってきて。
「…そうだね。アルフレッドくんにも見に来てくれって言われてるし!」
アーサー会長のノリノリな姿SNSに上げちゃう?、なんて冗談を飛ばしながら程よく冷めたスチール缶を素直に受け取った。
ごくりごくりと一気に飲み干しながら缶コーヒーってなんでこんなに甘いんだろう、なんて思った。
-番外編 fin-
■11月、とありますが本編の時間軸とは一切関係ございません。この連載はサザエさん方式で時間が流れております。
あまり深く考えずに読んで頂ければと。