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High Fever And Nursed
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呼んでる
誰かが呼んでる
意識がボーッとする中、かすかだが誰かが自分の名前を呼んでいる声がする。
その声から、自分は今寝ていることに気がつく。
(あれ?私、なんで寝て……)
状況が掴めない中、自分の名前を呼ぶ声のする方へ早く起きなくてはと思い、ゆっくりと目を開ける。
(誰だろう?今日ってバイトの日だっけ?
店長……起こしに来てくれたのかな?)
目覚ましに気づかないほど熟睡するのは久しぶりだ。
相当疲れていたのだろう。
無理もない、立て続けにあんなことが起こっては…
あんな事?
(私、なんで……)
怠くて動かなかった身体も徐々に動かせるようになり、弱々しい力の手で手探りで何かを探す。
その時、何かが手にあたり何を思ったのかそれを掴んだ。
「ん……てんちょ……」
「……まだ眠気が覚めないのか?」
そこにいると思っていた店長の声ではない、彼よりももっと低く、鼓動に響く声がアマンダの耳に届く。
その声に意識がだんだんはっきりとしてきて、ようやくアマンダの目が覚めたとき
「…………?あれ?」
「やっと起きたか」
目を覚ましたお姫様が最初に視界に入ったのは、マスク越しでわからないがこちらを見ているに違いないキラーだった。
「えっと……キラー…さん?」
「夕食の時間だというのに食堂に来ないから呼びにきた。まだ荷物を片付けていない所を見ると、おれとキッドが部屋を出た後すぐ就寝したようだな」
呆然としているアマンダとは対照的に冷静なキラー。
だんだんと意識がはっきりとしてきた彼女は自分が今、店長と呟いてキラーの服の袖を掴んでいることを認識する。
「ーーーっ!!?
す、すみません!私……」
「構わない。だが寝るならせめて腕のギプスは外してからにしろ。寝返りで圧迫したら具合が悪化する恐れがある」
「は、はい。以後気をつけます……」
どうやらベッドにダイブした直後すぐに寝てしまったようだ。
慌てて上半身を起こし、キラーの服の袖を掴んでいた手を離す。
そのままいけば確実にアマンダを起こすために顔が至近距離にあったキラーに衝突しそうだったが、それを見越してキラーは素早く顔を上げたため、そのような事態にはならなかった。
(やっちゃった……恥ずかしい)
異性に熟睡している顔を見られ、キラーの顔がまともに見れないでいる。
だらしなく口を開けたまま寝ていなかったか
変な顔で寝ていなかったか
自分の寝顔なんて鏡でも見れないため、どう見られていたか気になる。
口元を袖で拭ってみると何も付いていなかったため、涎は垂らして寝ていなかったようだ。
そこは安心できた。
頭の中が羞恥でいっぱいいっぱいのアマンダとは裏腹にキラーは至極冷静な様子で何か気になったのかアマンダの顔を覗き込む。
「っ!!?きゃっ!!」
先程の件もあり突然の事で酷く驚いたアマンダは二歩、三歩とものすごい勢いで後ずさる。
キラーは突然驚かしてしまった事に謝罪するもアマンダから目を離さない。
「先程から顔が赤いようだが、熱でもあるのか?」
「え!?い、いえ!!
だ、大丈夫です!平気です!」
「………ならいいが」
まだ納得がいっていない様子のキラーだったが、それ以上は追求はして来ず、食堂へと歩いていった。
慌ててその後ろを追いかけるアマンダ。
その時、キラーの言っていた通り、やけに身体が熱いことに気づくが、先程の事で緊張がまだ解けていないのだろうと思っていた。
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