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練乳は甘すぎる
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彼の部屋に訪れるのはいつぶりだろうか。
《着いたよ》と連絡すればすぐに《今行く》と連絡が来た。
私が住んでるマンションよりとても家賃がお高いところに住んでる真子。
大理石のような床に壁には大きな絵画が飾ってあり、セキュリティ完備がとことんされているロビー。
いつきてもマンションの入り口の前で一呼吸置くのはきっとこの高級感になれてないからだと思う。
「お迎えにきたでー」
猫背のゆる~い顔した真子が迎えに来てくれた。
「わざわざありがとう」
「おちゃのこさいさい」
「何言ってんの」
さっき飲んだアルコールがいつもアホな真子に磨きをかけててよく喋るなぁ
ご近所さんの迷惑にならないよう真子の部屋に向かった。
「何飲むん?ビールか?」
両手にビールの缶を持ってそれ聞いてくるあたり、私に決定権はないんだね。
「ビールでいいよ」
「ほい」
差し出されたビールを開け、コツンと二人並んで缶をぶつけあう。
テレビをつけて、この芸人がどーだとか、この女優は可愛いなど他愛もない話をした。
ちょっとお手伝い~と言ってトイレに行ってリビングに戻るとついていたテレビは消えていた。
「あれ、テレビ見ないの?」
「おー、、、まぁ、座れや」
缶ビールを片手に持って、こちらを見ずにもう片方の手でポンポンと床を叩いてくる真子
なんか嫌な雰囲気ではないけど、いつもとは違う空気が漂っている。
「なになに。怖いんだけど」
場を和ませようと笑いながら隣に座るが、真子は缶ビールを見つめたまま
「唐突なんやけど」
真子の声が部屋に響く。
変に緊張して体が凍ったかのように動けない。
真子は缶ビールから目線を外し、私の方を見て口を開いた。
「俺たち一緒に住まんか」