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最後は私。
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突然の発言に私の思考は停止した。
頭を整理しようと、目線を外して、下を向いてしまう。
目線の先には、膝の上で重ねられた自分の手が見えた。
「どうや?」
私が何も喋らないことを気にした真子が私に問いかけ、私の目線の先に見えるそれをそっと握って指と指を絡めてくる。
まるで、明日には消えてしまいそうな愛しいものを必死に引き留めるかのように。
あえて顔を覗きこむ事はせず、そっと私の手を握り返答を待つ真子。
きっと本気だからこそ何も言わないのだろう。
私は握られた手をギュッ、ギュッと握り返す。
すると頭の上から、「ふっ、なんやねん」と優しく、愛しさを含んだ声が聞こえて、私もつられて笑みを溢してしまう。
真子の手がそっと頬に触れ、顔をそっと上げられた。真子の顔はいつもより穏やかな表情をしていた。
そして、真子は私の鼻に自分の鼻を擦りつけてくるもんだから、くすぐったくて顔を退かそうとしても逃がしてくれないのが真子で。私はゆっくり押し倒されて、真子が乗っかってくる。
何も喋らず、ただ額と額をくっつけてくる。
そんなことをしてくる真子を凄く愛しく思えた。
「真子……一緒に住もっか」
そう言うと真子は、額、瞼、頬、鼻そして唇にそっと自分の唇をのせ、ゆっくりと私の目を見つめてくる。
「2LDKのでっかい部屋で、お互いの会社から丁度いい距離んとこにするんや。家具は全部新品にでもして、食器も増やさんとやな~、風呂も一緒に入りたいわ」
凄く楽しそう。
あれもこれもと言って、やりたいことを聞いてると凄い数だった。
でも、なんだかそれもそれもいいではないか。
「ははっ、凄く忙しくなりそうだね」
「せやなー、明日にでも物件見に行こうや」
「さっそく?!」
「当たり前」
また、二人で顔を見合わせて笑ってしまう。
こうなってしまったら誰も止められない。
「なぁ、杏」
「んー」
突然真剣な表情になり真剣な声が聞こえた。
「俺の隣でずっと笑っててくれんか。」
その瞳から伝わってくるのは、嘘偽りのない強い眼差しだった。
きっと、真子はずっと前から二人の未来を考えてくれてたんだ。
二文字で返すと、そっと私の唇に熱が伝わってきて
「ほんま、おおきに」
と、愛しさを含んだ声で囁かれた。