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二人だけ【17*クリスマス番外①】
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赤チェックのマフラー、クリーム色のダッフルコートにキャラメルカラーのニーハイブーツ。
人通りの多い街中に大きな時計台が1つ。
そこに1人の女が、鼻を赤くして震える体を抑えながら、1人の男を待っていた。
男の姿が見えると、その女は満面の笑みを向けて走りだし、これでもかというくらい抱きついた。
そんな現実あるわけない。
今日は一年で大きなイベントの日
そう、クリスマス
世のカップルが、大金をかけて想いを寄せる相手とデートをする日。
今日一番目立ってやろうとする女と男がイチャイチャする日。
クリスマスデートスポット特集!
という雑誌の項目に目を通して思った感想。
愛しい人の帰りを待ちながらリビングで雑誌のページを捲る音が余計に響く。
クリスマスは久々に盛大に祝おう!と言った本人は不在。
せっかく有給取って会社休んだのに、朝起きて開口一番目が、
「すまん。急な仕事入ってもうた」
仕事だから仕方ないという気持ちと、貯まってる仕事投げて休んだのにという気持ちがぶつかり合ったが、最終的には、
「仕方ないよ、いってらっしゃい」
と、見送ってしまった。
時刻は19時前。
真子に、腹を空かせとけ、と連絡が来たので、とりあえず夕飯を済ませないようにと空腹と格闘してきたが、正直限界だ。
しかし、カップルしかいない町に1人でご飯に食べに行く勇気もない。
はぁー、どうしよう。
雑誌を閉じて、瞼を下ろした。
いっそこのまま寝てしまう。真子が帰って来たら起こして貰おう。
あー、本当クリスマスなんてくそくらえ。
背もたれにしていたソファーに座り、そのまま体を重力に従うまま横に ボフン と倒れた。
さぁ寝よう。と、した瞬間。
「帰ったで~~!」
玄関からバカでかい声が聞こえた。
犯人は1人しかいない。
真子だ。
やっと帰って来た、、、、。どうしてくれてやろう。
もう動く気力もないから、そのまま横になってよ。
あ、寝たふりもいいかもしれない。
「杏?何してるんやー? 」
リビングの扉が開く音が聞こえた。
いつバレるのか、内心結構楽しみで緩みそうになる顔に力を入れる。
「寝てるんか、、、起きてろ言うたやんけ」
足音がだんだん近づいてきて、音が止まると私に直撃してたライトが何かによって妨げられたのか、影が私を覆い被さったような気がした。
「こんな無防備な格好しよって、、、。これでもくらわんかい!」
すると突然服を捲り上げられ、氷より冷たいんじゃないかと思うくらいに冷たいと真子の手が、がっつり私の脇腹を捕らえた。
「ぎゃあああああああああああああ」
獣のような声が部屋中に轟いた。