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分離した冬
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---1月中旬---
同棲相手より先に帰ってきた私は足早にリビングに向かい、缶ビールを片手に今日も1日お疲れさまでした!と1人心の中で呟き、プシュ っと今日の疲れが抜けていいく感覚に心踊らされて一口目を一気に飲んでいく。
はぁ~仕事終わりのビールはやっぱり最高だ
気持ちのよい喉ごしにやっと今日の仕事が終わったと思うとひどい安心感に包み込まれ、早速上機嫌な私はテレビの電源を入れて面白そうな番組を探すべくチャンネルをリズムよく変えていく。
たまにはニュースもいいかもしれないと思い、適当なニュース番組に番組を変え、アナウンサーがスラスラ読んで行く原稿を耳にしながらビールを口に運んでいく。
「日本も大変なんだなー、、、あれ?」
目にしていくと、1つ気になったニュースがあった。
どうやら東北の方では雪が酷すぎて電車が長時間動かなかったらしい。
そういえば東北には大学の頃お世話になった同級生がいたなー
今でもたまに連絡を取り合う仲で、大学の頃は私に悩みや嫌なことがあったとき必ず話を聞いてくれていた相手だ。
元気にしてるかなー
気になった私は、スマホを手に取り同級生の名前を探した。
"黒崎一護"
その文字を見つけると一呼吸置き、電話をかけた。
プルル…プルル…
5回目のコールで電話が繋がった。
「あっ、もしもし黒崎?」
『もしもし、って松田か、久しぶりだな』
私から電話をすることはめったにないせいで声が少し高くなってしまう。
そんなことに気づいたのか、なに可愛い子ぶってるんだよ。と笑い声が電話越しに聞こえてくる。
やっぱり、久しぶりに友達と喋るのは楽しいなー
『この前雪が凄すぎて雪に埋もれちまってよ~』
「あっはは本当黒崎はバカだなぁ」
『笑い事じゃなかったんだからな!』
「あっははははっ、て、あれ、えっ」
耳元にあったスマホから黒崎の声が遠のいていくのに気づいた私はハッと顔をあげるとそこには新年早々見てはいないものを見てしまった。
目の前の窓ガラスには
突然地獄の底へ突き落とされてこの世の終わりのような顔をした私と…
怒りに狂った閻魔大王様のような顔をした、私の同棲相手。
平子真子が私の真後ろでスマホ握りしめて窓ガラス越しに私を見ていた。
なんとか和まそうと笑ってみたものの、恐怖で顔がうまく動かない。
仕留められた私の目は逸らすことが出来ず彼の真赤黒い殺戮の海に満ちた瞳に射殺された気分だ。
「お、、、おかえり」
喉から絞り出した蚊のなくような声でなんとか声をかけた。
だ、大丈夫だろうか
ちゃんと声をだせいたのだろうか
無言を貫く真子。
私の目線を離そうとしてくれない。
「し、、しんっ」
ガンッ
後ろから勢いよく伸びてきた真子の拳は、私を光の速さで通り越し目の前の窓ガラスに隕石がぶち当たったような音が部屋に響き渡った。
「ひっ、、」
この緊張感で目の前に窓ガラスにあった真子の拳と当たった音が、余計私の体を強ばらせる。
「…ただいま」
ボソッとそれだけ言うと私のスマホを近くのテーブルに置き、リビングから出て行った。
去り際に私を見た彼の顔は、冷えきった風に殺されたこの冬に酷く似合う顔をしてたい。
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真子の怒ったシーンを考えるの楽しくて毎回どうしてやろうかと思うんですよね
大したことないことからシリアスにして最終的にはちょっとえっちなシーンも書いてみようかなって思ったりしちゃって