-
継続持続♢
-
ワンルームという狭い部屋で行われた営み。そこに愛はあるのかと言われたら頷けないだろう。心が満たされる訳でもないし虚無感にも襲われない。
一緒に居て好きだなぁとか、幸せだなぁとかも特別に感じない。狭い部屋で布団に転がりながら録画したドラマをチラチラと見て、スマホを弄り、再びドラマに目を移す。
ただ、思うのは「いつまでこいつ居るんだ」「さっさと帰れよ」と思われていないかって事。いや、帰るけどさ、動けないんだお尻重くて。
すると玄関先にある洗濯機から終わりを告げる音が鳴った。
「あー、どっこいしょ」
パンツ一丁の姿で布団から起き上がると洗濯機の方に向かい洗い終わった洗濯物を抱え戻ってきた。
「手伝う?」
「ん?いや、いい」
「あぁ、そう」
生憎ベランダというものが無い為、部屋干し。
ハンガーにシャツやバスタオルを引っ掛けて、洗濯バサミが沢山ついた干物にパンツをぶら下げる。
「…銀ちゃん、パンツ派手だね」
「うるせぇよ、見せもんじゃねェ」
「いや、だってなんかカラフルだなぁって」
彼はびっくりしたように目を見開いたが照れくさそうに言った。
きっと、この部屋に私が知らない女を沢山連れ込んでいる事だろう。噂にも聞いた。が、私はそれでいいと思っていた。
多少なりとも好きだった。でも今は好きなのかと言われたら難しい。
***
3時間分のドラマを見終え、ようやく私は重い腰を上げた。洗面所がない為台所で歯を磨き顔を洗った。
どうせ帰るだけだし、化粧はしない。
「マスクもらっていい?」
「おー」
「勝手に取るよ」
マスクを手に入れた私は、着替えをし香水を付けた。
そういえばこの前、MeTubeでおすすめの動画に出てきた香水の付け方を観たのを思い出した。
お腹まわりに3プッシュ。首の後に1プッシュ。
人の家だろうがお構い無しに振り撒くとふと頭によぎった。
この匂いが、この部屋につづけばいいなぁと。
そんな事を考えながら帰り支度をしていると、不意に手が伸びてきた
「ちょっと、なんで胸触るの」
「んー?なんかムラムラした」
「あっ、そ。」
お構い無しにバックを肩に掛けるとグイッと引き寄せられた。
「どーしてくれんの?」
「はぁ?」
「いや、銀さんの息子さん、めちゃくちゃ元気なんだけど?」
「知るかっ」
「…ダメ?」
首筋に熱っぽいくちびるを這わせられると背筋がゾクゾクした。
***
「お邪魔しました」
「あれ、随分と淡白に帰るんだな」
「もっと別れを惜しんだ方が良かった?」
「いや、、」
ガチャっと玄関を開けると雨の匂いがした。
「雨降ってんのか?」
「さぁ?」
「そこの階段、吹き抜けになってるから見てみろ」
言われた通りに玄関を出て2階に続く階段から見上げるとぱらぱらと水が落ちてきた。
「傘…いるか?」
「んーん、このくらいだったら平気」
「そうか」
「じゃあね」
ヒラヒラと手を振ると、パンツ一丁の彼も釣られるように手を降った。
ドアが閉まり、鍵のかかる音がした。