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Felistas
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あったかいのって、しあわせ。
「不服そうだな」
「違うよ、嬉しいよ?」
初めて丸一日お祝い出来るクランツの誕生日。しかも後に任務も無い。これって“滅多に”どころか“もう二度と”無いくらい貴重なのに。
「いいの?こんなので」
何でもやりたい事付き合うよって言ったの、いつもはあたしのワガママで連れ回すから。
「こうしていたい……」
毛足の長いラグの上で膝に乗せられ一時間。そりゃあたしだってぎゅうするの好きだから嬉しいのはホント。けどさ?
「やはり不服か」
「違うって……不思議なの」
先を促すみたいに見つめてくる、淡いのに冴えた碧色。あたしにはあたしが映ってるの見えるけど、クランツには映らない。
「ルリ?」
「ぁ……や、だらだらするの嫌いなんだと思ってたから、さ」
クランツの分まであたしが見る!と決めてたのに、些細な事で悲しくなっちゃったり。オトメゴコロってヤツは時々面倒。
「だらけているつもりは無い」
いやいやいや、コレのドコが?
「ならばもう少し判りやすくしようか」
「え?ぁ……」
添えられてるだけだった手がゆっくり滑りだす。かと思ったら、
「ッ?!うぬぁあぁあ!!」
「大袈裟だ」
あのね!急に転がされたらびっくりして当然でしょ?ラグの上だしクランツの上だし痛くは無いけどさ。
「柔らかいな」
「んッ……」
「良い香りだ」
「ちょっ、と!」
そんな格好のままあちこち触ってきて、顔を近付けられたら。
「判っただろう、私はお前に忙しい」
「あたしだってそうですー、だ!」
肌はぞくぞく、心臓はばくばく、疲れちゃうくらいに身体中が夢中。
「随分余裕有る言い様だと思うが」
全部判ってるクセに、このいじわるわんこ!
「……こんなトコではヤダからね」
あんまん、おひさま、ふわふわマフラー、あったかいのって幸せ、でも。
あったかいを通り越して熱いくらいの貴男と、もっと幸せ。
“Felistas”
●END●