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裏切られた期待。
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side エース
公開処刑まであと、数時間。
もう少しでマリンフォードまで移されることに
決まっている俺は、海賊女帝の言葉を思い出して唇を強く噛んだ。
ルフィ....。
俺のことを鬼の子と知っても尚、俺の存在を許してくれた数少ない人間だ。
そして、今は亡きサボと一緒に兄弟の盃を交わした。
俺の大切な弟。
それが、今、俺を助けにここに向かっている。
多分、間に合わねぇだろうが、
それでも、ここに来るまでにも沢山危ない目にあってる事は容易に想像できる。
俺のせいで、
「エースさん。そんな辛そうな顔をせんでくれ。
ワシまで胸が痛くなるわぃ。」
隣のジンベエが眉毛を下げてこっちを見る。
「大方、弟さんのことやら、おやっさんのことを考えておるんじゃろうが....。」
「.....ルフィは泣き虫で、俺の言うこともろくに聞かねぇ、、まだまだガキなんだよ。そんなアイツが、こんな所に来ちまったら、死んじまう。
兄貴である俺が守らなきゃいけねぇ弟なはずのルフィを俺が殺しちまう。」
強く拳を握ると繋がれた鎖が同時に音を立てて揺れる。
「親父だって、俺のことを見捨ててくれりゃあ
...」
そこまで言って口をつむぐ。
親父はぜってぇ助けに来るだろう。
親父は、白ひげはそういう男だ。
「....くっ....親父....。」
親父を筆頭に頭に浮かんでくる仲間の姿。
そして、、
「....ユカコ。」
思い出すのは、俺の名を呼ぶアイツ。
身長差が結構ある俺に走って勢いをつけては
飛んで抱きついてくる。
嬉しそうに、俺の名を呼んで。
それが嬉しくて、避けようと思えばできるそれをいつの間にかいつも正面から受け止めていた。
俺の顔を見上げて、ニコリと笑うユカコに
顔が赤くなって、毎度のように仲間にそれをからかわれて。
からかわれるのは嫌だったけど、
ユカコを避けようとは思わなかった。
「ユカコさんていうのは、とてもいい女性なんじゃな。」
ふと、ジンベエが俺を見てそう言う。
「なんで、会ったこともないのに分かる。」
すると、にぃと笑い俺に告げた。
「エースさんにそんな顔をさせてあげられるっちゅうことは、そういうことじゃろう。」
「そんな、顔って....」
そこまで言って、自分で気づく。
さっきまで、唇をかんでいたはずなのに、
俺は、こんな時なのに。
ユカコのことを考えると
俺の口は緩んで、笑っている。
「...ジンベエ。ユカコはやらねぇぞ?」
「エースさんを敵にまわすのは、アノ戦いで最後じゃ。」
そういって、2人で笑った。
____海楼石の手枷を後ろに付けられた俺は、ゆっくりと薄暗い階段をのぼる。
これから、好奇の目にさらされて、処刑台にあがることになるだろう。
親父。
頼むから、ユカコを置いてきてくれよ。
多分、大事な娘だろうから
危ない目には合わせないだろうが....
そこで、ふと気づく。
今、処刑されようとしている自分よりもユカコの心配をしていることに。
思わず口角があがる。
ユカコ。どうやら、俺は本当にお前にかなり惚れているらしい。
だから、間違っても俺を助けになんて来るなよ。
〜数時間前~
『_________。』
それは目の前の人物のわずか数㌢横を通過し海におちる。
すると海面に大きな水しぶきがあがる。
「....ま、さか、ここまで成長するとはねぃ。」
目の前にいたマルコが冷や汗を流した。
周りの兄弟たちも数人腰を抜かしているようだ。
『....ふぅ。....やっと完成だね。』
にぃと笑う女に、歓声があがる。
あの時、大技を使った時のイメージを強く思い描く。
「....ユカコ、あともう少しで戦場のど真ん中だぃ。」
『ついに来たね。....マルコ、死なないでね。』
「誰に言ってんだよぃ。」
『...パイナップル頭。』
「うるせぇよぃ、貧乳。」
お互いにバシッと背中を叩く。
「海面に浮上だよぃ!!!みんな戦闘準備にはいれ!!!」
私は大きく、息を吸い込んだ。
『エーーーースーーーーー!!!!!!』
久々に見たエースは遠くの方て鎖に繋がれていて
びっくりしたような顔をしていて。
少しだけ、泣きそうな顔をしていた。
_____公開処刑まで、あと1時間。
....To be continue.