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夢小説 DLove

 

  • へっくしゅん

    「お前の行くとこは天国じゃない」と そう願ってやまない今日この頃





  • 一瞬だけでも早く、一歩でも前に踏み込めていたら…





    ***



























    必死に走ってようやくここまでたどり着いたのは橋の下。今が何時なのかも此処が何処なのかもわからない。足袋にはじんわりと血が滲み出てる。
    朝になるまで此処に身を潜めようか、それとももう少し遠くまで歩くべきか。左の腰に下げている真っ白な鞘の刀と布に触れた。

    もう少しだけ、ここにいよう。暫くしたら動き始めよう。久しく走っていない為足が笑っている。

    「…はぁ、」

    情けない、という文字が頭に浮かんだが首を横に振り草むらの中にずんずんと足を進め身を潜めるように横たわり、瞼を下ろす。






    ***





    瞼を開ければ、川が橙色に染まっている。
    ぶるりと身震いをすると、そっと立ち上がり草むらを出ると土や葉を払い落とす。
    周りを見渡しながら姿勢を低くして物陰に隠れつつ街を歩く。

    あちこちに汚れが付いてボロボロの着物とは言い難い布に身を包んだ女は民家に忍び込むと、掛けてあった着流しと帯、そして草履を掴む。

    「すみません…」



    ぐっすり寝ている住人に頭を下げ物音を立てずに外に出て再び物陰に隠れ、汚いの布の様な着物を脱ぎ捨てその上に刀をそっと置く。着流しを着て帯をし、白の幅の広い布を帯に差し込み刀を下げ、草履を雑に履くと朝焼けの差し込む街に足を進めた。







    ***




    昼の活気に満ち溢れた街をふらふらと歩く。廃刀令が下り、腰に刀を下げてる人なんて居ない。まずいと思い今まで着ていた汚い着物の様な布をぐるぐる巻いて杖のように見立てる。

    ぐぅ…と腹の虫が暴れているのをほっときたいが、ご飯もまともに食べていなく、最後に口したのは…思い出したくもない…。
    目の前にモヤがかかり、気が付いたら倒れていた。何とかして立ちがあろうも足は笑っているし息がまともにできない。寒いし、眠い…。周りに野次馬が集まってくる。あぁ、なんて死に様だ…。







    「銀ちゃん、なんで集まってるアルカ?」

    「さァな。福引でもやってんじゃねぇーか?」

    「私、やりたいネ!」

    「神楽ちゃんそもそも今日福引なんてあったかな」

    「クソメガネうるさいネ!」

    「誰がクソメガネだ!!!あっ、神楽ちゃん!!」








    目の前に目が蒼く、今にも吸い込まれそうな綺麗な肌が現れた。杖替わりにしていた刀をそっと引き寄せる。



    「銀ちゃーん!新八ィ!人が倒れてるネ!」

    「なんだって!?」

    「あーあー、関わるなよ面倒なことになるだろうがよ…ったく…」



    メガネを掛けた少年が、女に向かい大丈夫かと必死に声をかけている。が、女の目は段々と濁り始めていて焦点が合わない。
    すると身体に温もりを感じた。


    「見せもんじゃねぇぞ!そんなに俺にケツぶっ叩かれたいか!?あぁ!?」

    「おいコラ見せもんじゃねぇアル!愚民共は散るヨロシ!!」

    「おいぃぃ!え?なにこれ!?なんの急展開!?」

    男が女に自分の着流しを掛け包んでると、ひょいと持ち上げ急ぎ足で街に消えていった。

    「あっ、待ってヨ銀ちゃ〜ん!」

    「あ!置いてかないで下さい!!」




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