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穿ったその思考
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ある日、松陽が捕まった。
拘束された姿を何も言わずにただ見ている主人公の名前がいた。
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「おまんも遊廓に行くか?」
「行くわけないだろ」
陣営でもある小屋の一角が主人公の名前の部屋になってた。男まみれの陣営でへんな輩が多くなると高杉が心配して部屋を確保してくれた。そんな中、坂本が加わり更に賑やかになった…とでも言っておこう。
そんな中、部屋にガラッと入って来ては飲みに行こうと毎晩のように誘われる。行く場所が遊廓と聞くと女は行けない。出ていけと坂本を追い払うと襖を閉めた。
「また振られたのか」
「主人公の名前はがないのぉ」
桂にそう言われると、坂本はからりと笑い外に出ていく。はぁとため息をつくとこっそり買い溜めて置いた酒をガチャガチャと縁側に出して腰掛ける。考える事はこれからどうするのか、戦略的な事が頭の中を駆け巡る。今日は疲れているのか酒の回りが早い。
あとは寝るだけ、と腹掛けに短い股引を履いてだらしない格好で飲み続けた。
「よォ、月を見ながら晩酌か。お前もロマンチックな所あるんだな」
「…坂田、遊廓に行ったんじゃないのか」
声をかけられハッとすると、目の前には銀時がいた。先程坂本達と遊廓に繰り出したと思いきや、もう帰って来ている。
「腹痛てぇって引き返してきた」
酒を挟んで座る銀時。しぶしぶお猪口を差し出し酒を注いでやる。
「気が利くな」
「タダ酒目当てだろう」
注いでやると、主人公の名前は再び月を見る。腹掛けの横から少しだけふっくらとした胸が見えて銀時はドキッとしてしまい顔に目を向けると酒で唇が潤い、酔って顔が紅潮している主人公の名前に再びドキッとした。
「なんだ、ゴミでも付いてるか」
「ばばば、ば、ゴミなんて付いてねぇよ!」
お猪口に入った酒をくいっと飲み干すと、酒を注ぐ銀時。
「なぁ」
「なんだ」
柱に寄り掛かった主人公の名前が銀時見るとサラリと髪の毛が顔にかかり視界の邪魔をする。
「松陽の事、どう思うんだ」
ふと、赤い目が鋭く見えた。
「どう…って、」
お猪口に入った酒を見るなり飲み干せば、銀時が酒瓶を持って注いでくれた。すまん、と一言頭を下げ、再び唇に酒を当てる。
「いい先生、だよ。助けられた。けど、私は先生を助ける為に刀を抜いたわけじゃない。」
「…、」
「晋助を、守るって約束したんだ。」
そう言うとお猪口の酒を飲み干した。麻の袋に入っていた乾物を取り出し銀時の口に放り込む。目を開く銀時にへらりと笑えば自分も乾物を口に入れる。
「それぞれ見てる方向は、違うだろう。けど奥にあるモノはみんな一緒な気がするんだ。」
「そうだな」
気がつけば、月の位置が低くなりつつあった。欠伸をひとつ銀時がするとそれを見てそろそろ寝るか、と酒を片付け始めた。左肩の百合の刻印の上にはいつの日か主人公の名前が自分で切りつけた刀跡がありそれにそっと触れる銀時。
「…人肌でも恋しいのか。」
銀時の手の甲を抓ると、いててと言って手を離す。
「そうじゃねェよ…、いつかこの花の事を教えてくれるか」
「この戦で坂田が死ななければな。だから、生きろ」
冷たくて黒い、だけれど何処か熱く燃える視線で銀時を見ると酒を持ち自室に戻り襖を閉めた。
「不思議な女」
そう呟くと先程口に放り込まれた乾物を食べながら縁側を後にした。
***
天人の勢力に負けじと刀を振る侍。いつ日か主人公の名前は〝黒夜叉〟と言われる事になる。
高く結い上げた黒髪、そして冷たく凍っている漆黒の瞳。血に染まるのが嫌だからと、甲冑や着物を黒に揃えた。その中に白く映える刀。
白夜叉と互角の剣術。そして鬼兵隊の女侍。
黒夜叉を見たものは生きて帰れない
死人に口なし、なんて大嘘。
***