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ジェ○ピケよりもジャージが楽ちん
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神楽と別れた後、大江戸ストアにふらっと立ち寄った。お登勢の店も本日は休みの為、日頃からお世話になってる銀時や神楽にご飯を作ろうと張り切っていた。
「…ついでに呑むか」
酒瓶が陳列されている所に行くとカートに載せた籠に次々と酒を入れていき、精肉、鮮魚、青果も籠に入れレジに行こうとすると横目にいちご牛乳が目に入った。ふと、銀時の顔を思い出し籠に投げ入れた。会計をすると、今月使える貯金以外のお金が底をつきそうになったがどこにも行けるわけがないので、まぁいいかと袋に詰めていった。
***
「…めちゃくちゃ重い…」
左手には食品と酒瓶の入った袋。右腕に掛けるように酒瓶が入った袋と酒瓶といちご牛乳の紙袋を抱えていた。
大量の荷物にすれ違う人々がチラチラと見てくる。その視線に苛立ちを覚えさっさと帰ろうと帰路を急ぐ。
***
「着いた…」
万事屋の戸をガラガラと開け、草履を脱ぎ捨てつま先で揃えると台所に行き荷物を置いた。
「くぅ〜、重かった…」
着慣れない着物と重たい荷物で肩がこり、ぐるりと回せばバキバキと音が鳴った。右腕の包帯を解き、左手と右腕を洗いうがいをした。
酒など冷蔵庫に入れ、早速夕飯の支度に取り掛かる。
暫くすると玄関から音が聞こえ銀時が帰ってきたらしい。主人公の名前はそれに気が付かずせっせと料理を作っている。
「けぇ〜たぞ〜」
返事がなく、台所からガチャガチャと音が聞こえるだけ。台所にひょいっと顔を出せば手際よく作っている姿が目に入るがそこには風貌が変わった主人公の名前がいた。それに心臓を叩かれた気分になり顔を赤くする。
「な、なんだ、あれから出掛けたのか。」
「あっ、早かったな。そうだ新八君の道場を借りて鍛錬してた。それから大江戸ストアに寄ってきたんだ。」
キュッと水道を捻り野菜を洗う。冷蔵庫にいちご牛乳が入ってる事を知らせると扉を開けた。
「その、着物似合ってんぞ。」
「あ、あぁ!お妙さんから頂いたんだ…!!」
まさかノータッチだと思っていた矢先にそんな事を言われたので一瞬手元が狂いそうになった主人公の名前。銀時が横切ると、以前嗅いだことがある匂いが主人公の名前の鼻を掠め目を見開く。
「銀時、今日どこに行ってたんだ?」
「なんだァ?束縛気質のある女は嫌われんぞ」
「束縛?私がする訳ないだろ」
いちご牛乳を取り居間へ向かう銀時の背中を見つめていた。
「…まさかな」
ははっと笑うと再び料理に取り掛かる。
カボチャに包丁を入れると硬くてなかなか切れず、どんどんとカボチャをまな板に打ち付けていたが、一旦諦め、引き抜こうとした瞬間切っ先が右腕に当たり少しだけ切れてしまったようで、ほんのり血が出る。
「んだァ?お願いだから台所壊さないでくれよ。」
音に反応した銀時が再び台所にやってくると顔を覗かせる。目線の先には右腕にうっすらと切傷が見えた。
「お、おい、大丈夫か?」
傷口を洗おうと右腕を引っ張ると主人公の名前は銀時の手を振り払い、右腕で銀時の顔に触れ左目をのぞき込む
「晋助!!目は…!?目は!?」
「落ち着け!主人公の名前落ち着けよ!」
主人公の名前の肩をガシッと掴むとしっかりしろと言わんばかりに揺らす。するとハッとした表情をし我に返る。
「あ、すまん…つい…。」
「…、」
バツの悪そうな顔をする主人公の名前に何と声を掛けたらいいか分からない銀時。傷口を水で洗う主人公の名前に絆創膏を渡した。ありがとうと言って水気を吹き器用に貼っていくとカボチャをぼぅと見ながら呟いた。
「晋助と、会ってきたんだな」
「なっ…」
突然の事に息を飲む銀時に図星だと思った主人公の名前は話を続ける。
「晋助、煙管吸ってただろう。攘夷戦争中、たまに吸ってたんだ。その匂い椿の香りで鼻につくんだ。それがまた臭くて…よく一方的に怒ってたんだよ」
「俺の着物に臭い付いてんのか」
「微かに、な。だからさっき気が動転してしまった。すまなかったな」
切なそうに笑うと、再びカボチャを切ろうと包丁を持つ。すると銀時が包丁を取り上げた。
「俺の方が今のお前よりうん百倍も力あるんだ。任せろ」
へらっと笑う銀時にそうだなと笑い返せば、切りたい形を伝えた。
***
「銀時出来たぞ〜」
夕飯の支度がやっと終わり、後は配膳するだけだった。その頃ちょうど神楽も帰ってきていた。
「わー!美味しそうネ!昨日の唐揚げも美味しかったけど今日のも美味そうヨ!」
「神楽ちゃん、手洗いうがいしないと銀時みたいにくるくるになるぞ」
「!それは絶対に嫌アル」
「ねぇ、主人公の名前ちゃん酷くない?ちょっとそれ酷くない?」
「うるさい。」
ピシャリと一括されると神楽が隣で手洗いうがいをし配膳を手伝ってくれた。机に並べると頂きます、と3人声を揃えて言うとまるで食卓は戦場に変わった。
「あっ!てめ!神楽ァ!肉じゃがそんな持ってくんじゃねぇよ!」
「うるさいネ!天パはカボチャの煮付けでも食ってればヨロシ!」
「おい!角煮まで持ってくこたァねェだろ!!」
「…。」
ぎゃーぎゃー騒ぐ二人に苦笑いしつつも左手で器用にご飯を食べ進める主人公の名前。すると神楽がご飯粒を口周りに沢山つけて微笑んだ。
「美味しいアル!銀ちゃん、甲斐性なしだからいっつもチャーハンしか作ってくれないネ。しかも赤ハムなんだヨ。」
「チャーハンはチャーシューが美味しいよな。」
「銀さんのところは貧乏なんですぅ〜」
ぶーたれている銀時を横目に、神楽は友達とあった出来事を主人公の名前に楽しそうに話していた。それを聞いてる主人公の名前もどことなく嬉しそうで銀時は思わず笑った。
「何ニヤついてるんだ、気持ち悪い」
「うわぁ、アグネス・〇ャンに通報した方がいいと思うネ」
「何でもねェし!アグネス・チャ〇も関係ねェからさっさと食えよ!」
「言われなくとも。」
***
夕飯を食べ終え、神楽は台所まで食器を運んでくれて、そのままお風呂に向かった。
のんびり食器を片づけていると、銀時が顔を出す。
「て、手伝うことねェか?」
「そうさなぁ…特にはない」
のんびりしててくれと言われると徐に食器洗いのスポンジを取り上げた。
「食器洗いくらいさせろ」
「いや、いつも寝床貸してもらってるからそのお礼という体でやっているんだが、」
「んなもん、いらねェよ」
するとガチャガチャと手馴れたように食器を洗う。
「…ありがとう。」
「おーおー、気にしなさんなァ」
「…着替えてくる」
着物もいいけどやはり着流しが楽チンだと言い寝室に消えていった。もう脱いでしまうのかと、少しだけ残念そうな銀時を風呂上がりの神楽がチラ見していた。
「銀ちゃん、キモいアル」
「だぁ!見てたのかよ!!いや、何でもねェ!さっさと寝ろクソガキ!!!!」
「けっ!!」
神楽は寝室にいる主人公の名前におやすみと伝え押入れに入った。
食器を洗い終えた銀時が居間に戻ると、主人公の名前が着物を畳みながら声を掛けた
「銀時、よかったら飲まないか。酒買ってきたんだ」
「…おう、頼ァ」