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スマルプリズン
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異様な雰囲気を醸し出す学園内。顔面包帯だらけの生徒が多いのもあるが、それ以上に重苦しくのしかかるような……そんな感覚を覚える。
(リサ、何かおかしな事に巻き込まれてなければいいが)
元来、跳ねっ返りで思った事をズバズバ言う性格のリサ。それゆえ揉め事も多く、大抵みかげか麻美が宥めるのだ。
追うべきかどうか迷ったが、どこにいるのか分からない。もう駐車場にはいないだろう。
どうしようか…と悩んでいるみかげの耳にクラスメートの話が耳に留まる
「あーあ、さっさと帰れば良かった。これから彼氏とデートなのに…」
「そうなの?いーなあ。私も彼氏ほしい」
「呪いのせいか分からないけど最近セブンス不人気なんだよね」
「そうそう。前までは凄く人気だったのに。それに比べてカス高は人気上がったよね」
「ねえ!!」
「あ、そう言えば、隣のクラスのハナジーが、カス高生を取材するとか言って張り切ってたよ」
「?なんで?」
「さあ?新聞部の……チカリンだったら分かるんじゃない?あの子、ハナジーとよく一緒にいるし」
「スマルプリズンだっけ?取材に行くの」
「えぇ!?あそこカス高生のたまり場じゃない」
…嫌な予感がした。まさかとは思うが、単独で行ったのだろうか。
ハナジーこと華小路雅は良家のお嬢様で、みかげの幼なじみだ。普段はおっとりしているが、特ダネとなると周りが見えなくなり、騒ぎを起こしたことも多々ある。かく言うみかげも何度が付き合わされた事があり、後始末が大変だった記憶がある。
(今回はカス高か。大丈夫なのか?)
確かにカス高…春日山高校はここ最近、評判が上がった男子校だ。なんでも凄腕の生徒会長がいるとか。
だが、荒れくれも多いのも事実。そんな場所にハナジー一人では危険だ。
それと、先ほど校門で会った果たし状を持ったカス高生。そして、ハナジーが取材に行ったであろうスマルプリズン。何故か引っ掛かった。もしかしたら、スマルプリズンに行けば二人に会えるかもしれない。
「麻美、未歩」
「どうしたの?」
「ちょっと出かける」
「え~?掃除は~?」
「ゴメン、リサと雅が心配なんだ」
みかげの真剣な顔に、麻美が頷く。
「分かったわ。リサのことお願い」
「ありがとう。今度、ピースダイナーで奢るから」
「え?ほんと?やった~!!行ってらっしゃ~い!」
ゲンキンな未歩に苦笑いしながらみかげは教室を後にした。
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足早に廊下を歩いていると、前方に顔見知りの一人の女子が歩いていた。
「チカリン!」
「あ!十六夜先輩!そんな急いでどうしました?」
上田知香…通称チカリン。新聞部に所属するハナジーの後輩。かなりの情報通でハナジーも一目置いている。
「ああ、雅は帰ってきたか?」
「それが…まだ帰ってきてないんですよ~…。もしかして人質にでもなっちゃったのかとチカリンも心配してまして~…」
「人質…」
「あ、知ってます?カス高の番長さん、周防先輩をライバル視してるんですよ」
「な、んだと?」
「もしかしたらハナジー先輩、周防先輩を呼び出すために人質にされたかもしれないです」
「!……そうか、分かった。ありがとな」
「え、十六夜先輩~?」
チカリンの話を聞くなり、走り出す#名前#。
人質……
一番危険な状況だ。それに周防達哉が少なからず絡んでいる。彼が絡んでいるならばリサも……。
のんびりしていられない。みかげは校門を飛び出し、偶然通り掛かったタクシーを呼び止めた。
……………ー
…………ー
……ー
数分後、みかげはスマルプリズンに到着した。入口には周防達哉のものらしきバイク。(以前、リサに教えてもらった)
間違いなく二人はこの中にいる。
そう確信したみかげがスマルプリズンの入口を開き、中へ入って行った。
…………―
……―
…―
「リサ!雅!」
室内では、すでに周防達哉とリサがカス高生と対峙していた。みかげの声にリサが後ろを振り向く。
「あ!みかげ!来てくれたんだ!」
「大丈夫か?雅はいるのか?」
「雅?そこにいるよ」
「………え…」
見ればそこには……
ソファに座り、缶ジュースを飲んですっかり寛いでいる雅の姿があった。