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Joker
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結局、ジョーカー様を試すのは、リサと三科の子分三人の四人。
「とほほ…なんで俺達が…」
「さ、行くよ?ジョーカー様、ジョーカー様お出でください」
儀式が進んで行き、四人は自分の携帯から自分の番号をダイヤルした。
―プ・プ・プ……―
普通はかからない。話し中になるはずだ。みかげはそれを願った。なんだ、噂は噂だ…そう言いたかった……が、現実は無情にもみかげの願いを打ち砕いた。
―…プルルル…プルルル…―
「!!」
「う、そ…」
リサと子分たちが明らかに焦り出す。すると…
―プッ……―
受話器の向こうで何者かが電話を取った……。
リサが震える声で問い掛ける。
「い、今……」
その後に、子分達も問い掛けた。
「どちら……ですか?」
………ドクン………
(この感じ…………まさか!?)
ペルソナが発する共鳴が、みかげに危険を告げる。
バチバチ………シュー…
黒い空間が開かれ、そこからピエロのような仮面を被った白い服を着た人物が四人の背後に立っていた。
『汝が後ろに……我はジョーカー……夢に煩う汝が引いた、最後の切り札…汝、理想を述べよ』
(あ、あれがジョーカー!?)
…みかげは動けなかった。上手く言えないが、見えない力に圧倒されて………怖いと感じたのだ。口調こそ穏やかだが、なぜか自分達に敵意を持っている………ペルソナの共鳴がみかげにそう告げたのだ。
動揺し、何も出来ずにいる四人に、雅が慌てたように叫んだ。
「いけない!早く理想を言ってください!ジョーカーに理想を言えなかった人は、影人間にされてしまう噂なんです!!」
「な、なんだと!?リサ…!!」
ジョーカーは頭を振り、冷たく言い放つ。
『切り札はスポイルされた…汝がBETしたのは“夢見る心”…儀式のルールに従い貰い受ける』
そう言うと同時に、髑髏の形をした水晶を掲げる。その直後だった。
「「「うわああああああ…」」」
三人の悲鳴が聞こえた。みかげがそちらに目をやると、信じがたい光景が広がっていた。
子分三人の額から青白い光が出て、その光はジョーカーの持つ髑髏に吸い込まれていたのだ。それだけではなかった。次第に三人は黒くなっていったのだ。
「ケン!ショーゴ!タケシ!」
三科が叫ぶ。
「てめぇ……何しやがった!?」
息巻く三科にジョーカーは冷静に答えた。
『理想とは、力無き者からすれば苦痛でしかない。その苦しみから解放してやっただけのこと…叶わぬ夢なら見ぬ方がましだ……』
「な、なんだと!!」
なおも突っ掛かる三科を一瞥し、ジョーカーは子分三人を見遣る。
『彼等は夢見るの抜け殻…見えてはいるが見えていない。世の中から忘れられ、やがては本当の影になる』
そこまで言うと、ジョーカーはみかげ達を見た…いや、睨みつける………そんな感じがした。
『戯れ言はここまでだ。貴様らには別の用がある……』
ペルソナが発する警鐘が頭にガンガン響く。
…逃げたい………怖い………その感情だけが、今のみかげを支配していた。
『永かったぞ、周防達哉……僕は待っていた…貴様らが僕を呼び出すこの時を!!』
「あ…動けない……怖いの…?」
「「!?」」
リサ、三科、周防もみかげと同じく、体を震わせ動けずにいる。
その時だった、ジョーカーの体から力が放出されのだ。みかげは思わず膝を付く。…しかし同時に別の感情も生まれた。確かに怖いのだが、何故か悲しくもなったのだ。
(?……アテナ……何を訴えているんだ…?)
俯き考え込むみかげを巻き込み、リサ達も異空間に引きずり込まれた。