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歪む空間に、ジョーカーと対峙する形で向き合う四人。
『冥土の土産に面白いものを見せてやろう。ペルソナとは違う本物の“悪魔”を!!』
ジョーカーの言葉を合図に現れた、三匹の異形の生き物。竜のような外見をしており、その目はギラギラと光っていた。
「何!?あの化け物!!」
リサの叫びに反応した悪魔たちが#名前#達に襲い掛かってきた。みかげ達は、寸での事で避け間合いを取る。
「!!くそっ」
先に動いたのは周防だった。ヴォルカヌスの火炎魔法、アギで悪魔を一匹倒した。その時、様子を伺っていた悪魔が一匹、リサの背後に回り襲い掛かってきたのだ。
「!!リサ!!」
「え!?」
みかげはとっさにアテナの電撃魔法ジオで倒す。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうみかげ!!…このまま何も解らないまま殺されるなんて…………絶対やだ!!」
リサはエロスの地変魔法マグナで悪魔を倒した。残るは………ジョーカーだけとなった。すると、三人に三科が声を掛ける。
「お前ら手を貸せ! 四人掛かりなら倒せるかもしれねぇ…!!」
「わかった」
「うん!」
「いくぞ…」
まず、アテナのマカカジャで三科の攻撃力を上げ、のこりの三人が力を合体させる。
「「「ハイドロブースト!!」」」
……しかし、ジョーカーは堪えたようすはなく、自らもペルソナを発動させた。
『合体魔法か…アイディアは良かったが温い。その程度では万年経っても僕は倒せん!!』
ジョーカーの体から出た光は形を成していく。それは…ノッペリとした、見ただけでも分かる危険な存在…………。
『三科栄吉…リサ シルバーマン…十六夜みかげ、そして…夢奪う者よ……死ぬ時だ!運命の車輪からは逃れられん!』
…すっかり恐怖に支配された四人は抵抗も出来ないまま、ジョーカーのペルソナにより倒れた。
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空間が消え去り、元の世界に戻った。
『その目…変わらないな、貴様は………人の夢の骸の上で、一体どんな夢を見た?』
そういうジョーカーは片手で周防の首を締め上げる。
「ぐ……?」
『隠しても分かる。就職…したかった。そうだな?』
周防は咄嗟に目を伏せた。それを見たジョーカーは高らかに笑った。
『クックックッ…アーハッハッハ!!貴様らの夢など叶わせるものか!!もう分かった筈だ……僕が何の為に貴様らの前に現れたのか!!』
「し、るかよぉ…」
「私たちが……あんたに何したっての……?」
「私は……お前なんて知らない……覚えのない事で…殺されてたまるか!」
みかげ達の言葉に、困惑したのかジョーカーが周防から手を離し、後ずさる。
『本当に…覚えていないのか!?馬鹿な!!何という…!何と言うことだ!!そんな貴様らを殺して、一体何の意味がある!?』
頭を抱え、叫ぶジョーカーをただただ見つめる四人。しばらくすると落ち着きを取り戻したのか、ジョーカーは四人に背を向ける。
『命拾いしたな…だが、休む暇は無いぞ……我が配下の悪魔が刺客となって貴様らを襲う』
ジョーカーはそう言うと、胸ポケットから花を抜き、周防に投げ渡す。
『このアイリスが貴様への極印だ…走り続けろ。そして犯した罪を思い出せ!!その時こそ、我が復讐が成就する時だ!!』
バチバチ……シュンッ
ジョーカーは消えた。みかげはホッと胸を撫で下ろす。すると、三科が影人間となってしまった子分たちに近寄る。
「ケン、ショーゴ、タケシ……すまねぇ。俺がこんな事やらせなけりゃ……」
みかげはいたたまれなくなり、俯いた。三科はあの三人をとても信頼し、可愛がっていたのだろう。そして、まさかこんな事になるなんて想像もしていなかったのだろう。彼の深い後悔を痛いほど感じた。
「あの……番長さんは一体どなたと話していらっしゃるんですか?」
不思議そうな雅の言葉に、みかげとリサが彼女に振り返る。
「……本当に忘れちゃったんだ……」
「…………悲しいものだな。さっきまで普通に会話していたのに……」
影人間になると、世の中から忘れ去られ、やがては本物の影になる……。
ジョーカーの言った事を目の当たりにした三人は言葉を失った。
そんな空気の中、みかげの脇をすっと通り抜けたのは…
「す、周防…先輩……」
周防達哉だった。
彼は、出入り口の階段へ向かって行った。おそらく、ジョーカーを追い掛けようとしているのだろう。そんな彼を三科栄吉が引き止める。
「待て…周防。お前、野郎を追っ掛けるつもりだろ…?ケリは俺がつける…引っ込んでな……」
「!!」
そう言うと、三科もまた出入り口へ向かう。このままでは、二人とも何も準備せず、乗り込んで行きそうな雰囲気だ。リサもみかげも、さすがに放っては置けず、二人に駆け寄った。
「ちょっと待て、二人とも!相手はあんな化け物じみた奴なんだぞ!?」
「そうだよ!バラバラじゃ、みんな殺されちゃうよぉ!!それに追い掛けるっていっても何の手掛かりもないし……警察とか誰かに何とかして貰おうよ!!」
二人の必死の提案も、周防と三科に却下された。
「誰がこんな話信じるってんだ!?武器でも何でも手に入れて、野郎をぶっ殺さないと、こっちが危ねぇんだ!!」
…確かに三科の言い分は正しい。この状況をどう説明しても、警察は取り合ってはくれない。……自分達の身は自分達で守るしかない………まさしく今の状況だった。
「しかしこのご時勢、武器なんてどこで調達すればいいのか……」
みかげの言葉に三人は再び黙り込む。ゲームの世界ならともかく、この界隈で武器なんて売っている場所なんてない。まさに四面楚歌……四人が俯き考え込んでいると……
「それなら、私がお力になれると思います」
雅が名乗りを上げた。
「本当か?」
「はい。私、ジョーカーに関する情報を集めてきます。その間に、皆さんは何か身を守る術を用意なさってください」
力強く頷く雅に、四人は少しずつ落ち着きを取り戻した。
「そう言えば…カメヤ横丁のラーメン屋さんが、武器の密売をしているって聞いたことがあります。なんでも店主さんが、元女スパイだとかで……こんな事態です。行くだけ行ってみたらいかがでしょう……?」
雅の話を聞き驚く一同。みかげも平坂区のカメヤ横丁のラーメン屋は知っている。ただ、武器うんぬんではなくゲテモノ料理があるという話はよく聞いていた。可能性は限りなく無に等しいかもしれない。でも………
「噂が現実になる……ジョーカーで実証できた今なら、可能性はあるな。賭けてみる価値はある」
「うん、みかげの言う通りだよ!ペルソナだけじゃ不安だし…。そのラーメン屋に行ってみようよ!!」
みかげとリサの言葉に、周防と三科、雅は頷き、五人はスマルプリズンを後にした。