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アイスる上司
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自己紹介しよう。
私は夢主、秘密結社ライブラの一員である。
一風変わった同僚とカッコいい素敵な上司に囲まれながら、立派に仕事をこなしている。
「夢主、この書類の整理を頼んでも良いかな?」
「わかりました。クラウスさん」
「ありがとう。いつもすまない」
「気にしないでください。いつでも頼ってくださいよー、クラウスさんは働きすぎです!」
私がそう言うと、クラウスさんは恥ずかしそうに顔を掻いている。
嗚呼、天使……ここに天使がいる。。
ほくほくとした気分で別の部屋に移動しようとした時、私の手帳からヒラリと何が落ちた。
「?夢主。何か落ちたぞー?」
「へ?」
そしてそれを拾ったのは、
「…………クラウス?」
我が愛すべき上司が一人。スティーブンさんであった。
01
「!!あ!ありがとうございます!!」
きょとんとしているスティーブンの持っていた写真を、夢主はバシュッと奪い取ると、急いで部屋を出た。
『あぁああああ!!やばい!セコムに!クラウスさんのセコムに見られたー!!!』
夢主の心は乱れていた。
しかし、他の写真でなかったことは彼女にとって唯一の救いであった。
別の部屋に入ると、夢主は他に落とした写真はないかと急いで確認した。
そこに写っていたのは、
スティーブン、スティーブン、スティーブン、スティーブン、スティーブン、スティーブン、スティーブン、、、
「よ、良かった。他のは全部ある。。」
そう。何を隠そうこの夢主。
スティーブンのストーカーなのである。
あのクラウスの写真も実は小さくスティーブンが写っていたのだが、幸か不幸か、どうやらそれは気付かれなかったらしい。
しかし、見られた相手が不味かった。
スティーブンに見られてしまったのは痛い。
クラウスのセコムである彼のことだ。
絶対に何か聞いてくるに決まっている。
「はぁ、、どうしましょう。私のスティーブン。。」
そう言って夢主は写真の中のスティーブンに問いかける。
ここにザップでもいれば、「番頭はお前のじゃねぇだろ」とツッコミが入るだろうが、残念ながら彼は今仕事で不在だ。
「うーむ。。とりあえず書類の整理しよう」
夢主が書類の整理を終えて、クラウスのいる部屋に戻ると、そこにはスティーブンしかいなかった。
「あれ?スティーブンさん。クラウスさんは??」
「嗚呼、ちょっと急用が出来てな。今さっき出かけていったよ。」
「あら、、頼まれてた書類があったんですけど。。」
「それは僕が見ておこう。お疲れ様」
スティーブンは夢主からスマートに書類を受けとると、席に着いて彼女の作った書類を眺め始めた。
てっきりさっきのことを聞かれるかもと思っていた夢主がきょとんとしていると、「どうかした?」とスティーブンに聞かれてしまった。
「あ、い、いえ!なんでも!」
「そうかい?…ん。この書類ならバッチリだろう。今日は帰って良いぞ」
「あ、ありがとうございます!じゃあお先に失礼します!」
想い人からのOKに夢主はテンションが上がり、嬉しそうに帰り支度を始める。
「ん?スティーブンさんはまだ帰らないんですか?」
「あー、、僕はまだ終わってない仕事があるから」
「!手伝いますか!?」
「いや、大丈夫。ありがとう、早く帰りなさい」
「あ、はい。わかりました。。」
スティーブンに丁重に断られてしまった。
きっと重要な仕事なのだろうと、自分を納得させ、夢主は事務所を出た。