-
身近なものほど盲点。
-
あれから2週間たって、夜になる度、あの砂浜に行ってもワンピースの世界に戻ることは無かった。
『...ユカコ。もう、帰ろ?』
砂浜に座り込んで涙を流しながら遠くの海を見ている私の後ろで、優しい声色でそう促すマイ。
マイもサンジと会えなくて辛いはずなのに、日に日にやつれていく私に気を使っているのか、1回も私の前で泣かなかった。
私だけ、こんなに泣いてちゃダメだ...。
涙を手の甲で無理やり拭う。
『うん、帰ろう!』
無理やり笑顔つくって振り向いた。
『ユカコ!!!!!!!!』
『ッ.....』
振り向いて目が合った瞬間にマイに強く抱きしめられる。
『....ど、うし『この、ばか....。』』
耳元で震えるマイの声。
『我慢なんて、してんじゃないわよ。』
『だって、私が泣いてたらマイがなけないじゃんか。』
『ばかね、、そんなの気にしなくていいのよ。』
私の方が徐々に濡れていく。
それに気づいてマイの背中に腕を回した。
『一緒に、泣こう?』
自分の声もまた震えだす。
『...うん。』
ツライよ。
好きな人に、会いたくても会えないのは。
ギューって胸を誰かに鷲掴みにされているみたいに苦しくて、
息もつまって。
上を見上げたいのに、気持ちがずっと下を向いてしまう。
忘れた方が楽なんてことはとっくに分かってるの。
それでも、貴方の事が頭から、、心から離れない。
_____会いたいよ。
私たちは 、朝が来るまで泣き続けた。
真夏の朝日が頬に当たる。
真夏なだけあって朝日でも紫外線は強そうだ。
『...ぷ。...ユカコ、アンタ、目腫れて凄いことになってるよw』
『そんなこと言ったら、マイだって!』
2人とも瞼を泣き腫らしていた。
でも、夜通し泣いたお陰で2人ともスッキリしたような顔をしていた。
2人ともお互いの顔を見て笑っていると、日が昇ったばかりの海から、何やら水が跳ねる様な音がきこえる。
バシャバシャ。
『な、なんの音?』
『まさか、こんな早朝に泳いでる人いる?』
朝日の逆光で見えない中、目を凝らしてみる。
『なにあれ、、魚?』
『まさか!あんな大きな魚、こんなところにいるわけないよ!』
『だよね...。でも、どう見ても尾ヒレが....。』
『....。私には、人に見えるけど。』
どんどん、近づいてくるそれに、私たちは顔を青くした。
『...まさか、そんな事って。』
『夢だ。これは、夢だ。』
「アンタら、、帰ってきたのかい?」
『『ぎゃあぁぁぁぁぁあぁぁっ!!!!!!!!!!!』』
ザパーンと水飛沫をたてて上陸したそれはよく知った人物だった。
『居酒屋の、、おおおおおばさんーーー!?』
しかし、その人物は私たちの知っている形をしていなくて....まるで、
『人魚....。』
『おばさんが、人魚?』
「知らなかったのかい。」
『『いや、知るわけないだろー!!!!』』
ピチピチと人魚特有の尾ヒレをひらつかせるおばさん。
まさか、この世に人魚がいるなんて。
『あれ?でも、なんでおばさんの尾ヒレ二つに裂けてるんだ?』
「あぁ、これかぃ?」
マイの疑問に反応するおばさん。
「よぃしょっと。」
『『ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』』
「うるさいねぇ、立っただけじゃないか。」
『『いやいやいやいや!!!!』』
スクっといきなり立っおばさんに思わず2人で後ずさりする。
「人魚は30歳になると尾ヒレがふたつに分かれるのさ。」
その言葉でピンとくる。
『おばさん、ワンピースって知ってる?』
そうおばさんに訪ねた私にハッとしたマイ。
「あぁ、知ってるさ。...ワンピース世界の魚人島。そこが私の生まれ育った場所。」
ピチピチと尾ヒレを左右に振りながらそういうおばさん。
マイと顔を見合せる。
『ワンピースの、世界に戻りたいの!!』
おばさんに詰め寄って手を握る。
少しの希望を掴んだ。
「....アンタら、正気かい?」
____エースを、サンジをもう1度この腕に。
歯車が止まったなら、再び自らの手で回すだけ。
『『私の全てをそこに置いてきた。』』
.....to be continue.