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鍵を握る。
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side エース
あれから月日は流れ、ユカコが俺の前から突然消えてから2年たとうとしていた。
風呂上がりに夜の船の甲板で涼んでいた俺は、海に反射した満月を船の手すりに肘をつきその手に顎をのせてボーッとしながら眺める。
「....ハァ。」
波打つ黒い海に視線をおとす。
~二年前~
「おおおーー!!エース弟!!よく食うなお前!!!」
「大食らいなところはエースそっくりだな!!」
「だーっはっはっは!この肉うめぇぇぇぇっ!!」
「あっ!おい!ルフィ!それ俺の肉だ返せっ!!」
「むぐむぐむむむむっ!!!」
仲間に囲まれながら肉を奪い合う俺とルフィ。
宴も中盤に差し掛かりだいぶみんなも酔ってきて千鳥足だ。
俺はさっきまでまた皿に顔をツッコミながら寝てたもんだから顔がご飯粒だらけである。
だが、そんなことはいつもの事なので気にもせずに、また目の前にある肉にかぶりついた。
「なぁ!エースー!!!」
「んー?.......っブーーーーーーッ!!!!おまっ、っハハハハハハッ!!!!」
ルフィは、空気を吸い込んで膨らんだ腹にペンで顔を書いて腹踊りをしていた。
我が弟ながらなかなかの出来である。
「いいぞー!ルフィ!!」
「もっとやれやれー!エース弟!」
親父の船で久々に弟とじゃれ合うのに夢中で、周りのことなんて微塵も見えていなかった。
ふと親父と目が合っていつものようにニカッと笑う。
親父もニヤリと笑うとさっきユカコに注意されていたにもかかわらず、酒を瓶ごと飲んでいた。
あれは、後でユカコに怒られるだろうなーって
親父の周りを見渡すも、そのユカコがいない。
どこに行ったのか、だいぶ酒が入ってふらつく体をなんとか地面と平行に保ちながら立ち上がり、ユカコの姿を探す。
「おーい、ユカコどこいったー?」
絡まりそうになる足を前に進めながら、広い船を歩いていくと、船の最後尾まで来てしまった。
そこには2人で一升瓶を挟みながら会話をしているユカコとマイ。
声をかけようとも思ったが、なにやら踏み込めない雰囲気に手すりにもたれながら見守る。
ってか、あの一升瓶どっから持ってきたんだよ。
女2人で飲む量じゃねーだろ。
そんなことを心の中で思いながらもユカコの横顔を静かに見つめると、急に薄らと涙を浮かべるユカコにドキリとする。
つい数日前に、ユカコの初めてを奪った時にみた顔がチラついた。
「って、俺は何を考えてんだ.......」
頭を抱えてフーっと息を吐く。
「飲みすぎたな。頭冷やすか。」
このままだと襲ってしまいそうなので、シャワーでも浴びるかと思い踵を返した。
背中の方角から物凄い光が放たれる。
瞬時に頭に過ぎるのは、、
その方角にいる人物のこと。
考えるよりも先に体が反応した。
さっきまで千鳥足だったのが嘘のように俊敏に動く体に正直驚いた。
必死にユカコに手を伸ばす。
「ユカコっ!!!!!!!!」
ルフィも異変に気づき、走ってきたが。
俺の伸ばした手は指先もかすることなく、空を切った。
船に沈黙が訪れる。
「.....なっ、んだと?....消えた??」
誰かがそういった瞬間。
俺の中で何かが弾けた。
「くそおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!」
頭をおもいっきり甲板に叩きつける。
「やめてください!!エース隊長!!!!」
2番隊の隊員が、俺の体を必死で抑える。
「オイ!エース!!!!!!!!何してんだッ!!!!!!!!」
それでは止まらず、ルフィまで俺にゴムの腕を巻き付けて止めようとするがまだ止まらない。
「なんでなんでなんで!!!!」
なんで、俺はお前に助けられたのに。
俺は、お前を助けてやれない。
確かに、聞こえたんだ。お前が消え去る瞬間。
俺の名を呼んで、助けてって....。
「沈まれよい!エース!!!!!!!!」
飛んできたマルコに、思いっきり殴られる。
手加減はなしだったせいで、俺は甲板に首からめり込んだ。
痛さと苛立ちに一気に頭に血が登る。
甲板に、めり込んだ頭を引き抜いてマルコに一発お見舞いしてやろうとして顔を上げた矢先。
真剣な顔のマルコが目の前にいた。
「お前が冷静じゃなきゃどうする?」
頭の上から淡々とそう言われて、一気に頭に登った血が徐々に冷えていく。
ゆっくりと、首を動かして先程までユカコとマイがいた所を見た。
「....ワリィ。みっともねぇことして。」
ぼそっとそう言うと、マルコの手がポンポンと2回ほど頭にのった。
「まだ、若ェからなぃ。気持ちは分かるが、それより、まず、親父に詳細を報告する事と、なんでアイツらがいきなり消えちまったのか。どうしたら取り戻せるのかを家族みんなで考えることがやるべき事だろい。」
「....おぅ。」
やっぱ。マルコはこういう時、1番頭がよく回る。
きっと、人が目の前でいきなり消えるなんてことマルコ自身初めてだったはずだ。
貧乳だとからかってはいたが実は本当の妹のように溺愛していたのをみんな知っている。
そのマルコが俺みたいに感情を表に出さないのは、長男であるマルコが今それをこの場でしてしまったら、みんな冷静でいられなくなるからだ。
それが、できるのが大人だからなのか、経験なのか、マルコだからなのかは分からないが、素直に凄いと思った。
「先に、親父に報告してくるよい。...あと、手荒な真似して悪かったなぃ。額の血は、後でナースに治療してもらえよぃ。」
「わかった。止めてくれてありがとな!マルコ!」
「いいよぃ。」
それを合図に、沈黙と化していた白ひげのクルーは、とりあえずと親父の元へと足を運ぶ。
額の血を手の甲で拭って、親父の所に歩こうとしてあることを思い出す。
「....一升瓶。」
アイツらが、飲んでいた一升瓶がどうも気になった。
ユカコのやつ。
あんなのどこから持ってきたんだ?
なぜか引っかかった俺は、一升瓶を持って親父の元へ足を進めた。
「.....??.....なんだこれ、読めねぇ?...あとでサッチにきいてみるか?」
見たこともない時で書かれたそれに、違和感が生じた。
「...産地は.....魚人島。」
....to be continue.