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帰る場所。
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夜の砂浜に座る私とマイの手にはいつもの一升瓶。
そのラベルには達筆で[繋_ツナギ_]と大きく書かれている。
「ほら、これ持ちな。」
居酒屋のおばさんに紅い盃を持たされる。
『いや、おばさん!!こんな時に酒なんて飲んでられないよ!!』
『そうだよ!私たちは一刻も早くワンピースの世界に戻らなきゃ行けないんだ!!』
ワーワーと騒ぐ私たちに手をバンと突き出したおばさんに口を噤む。
「わかってるさね。だから、その酒が異世界への扉を開く。」
これが?
私はおばさんの手によって盃に注がれたお酒を見る。
それは月明かりが反射してキラキラと輝いている。
「それは、アタシが仕込んだ酒。光も届かないような暗い海底で寝かせた代物で、ワンピースの世界でも魚人しか作れない物さ。」
それを聞いても、私の中では何の疑問も解決しなかった。
とにかく、おばさんが作った魚人しか作れないお酒ということはわかったのだが、これがなぜ異世界への扉を開く鍵になるのか。
目の前のマイもジッと盃を見つめている。
なんだか、不思議だ。
いつもはこうやって盃を持ったらすぐに飲んだくれているのに。
『....これで、異世界に、ねぇ。』
「満月の夜にだけ、繋がる。」
ボソリとおばさんが言葉を紡ぐ。
「月明かりに反射した、」
__________満月?
何かが引っかかる。
ワンピースに初めてトリップした時も
こんな、満月の日だったね。
相変わらず、好きだね。その酒。
私たちは姉妹だ!
当たり前だ、ばーか。
『....まさか。』
おばさんを、見上げると、ニヤリと笑っていた。
「繋はその名の通り、異世界へと繋がる道となる。」
『マイ、いくよ。』
『は?...え?』
まだ状況を掴めきれていないマイの腕を自分の方に引き寄せる。
『む、むううう!?』
私はマイの口に盃の中身を無理やり流し込んだ。
「元気でね。....気をつけて行っておいで。」
私も勢いよくお酒を喉に流し込んだ。
『おばさん......行ってきます。』
光に包まれながら、後ろを振り返る。
最後にみたおばさんの笑顔は優しかった。
コポリと水の中にいるような音と浮遊感が体を包む。
今度は離れないようにと、隣にいるマイを胸に強く抱きしめて、次にくる強い光に目をきつく瞑った。
暖かい。
太陽の匂いがする。
まるで、春に草原でひなたぼっこをしているような感覚に居心地の良さを感じる。
「ユカコ!!..........きろ!!」
誰かに呼ばれているような気がする。
「....し...たねぇ、、。...後で怒るなよ?」
仕方ないじゃない。あったかくて気持ちいいんだもん。
もう少し、寝させて。
「ユカコ。いい加減に起きろよ。」
途端に、息苦しさを感じて目を見開く。
『うんっ!?.....!!!!!!!!.......ん、んっ////』
あぁ、暖かさの原因は貴方だったの。
息苦しさで、目を見開いた。
確認した姿に、抵抗しようもなく涙が溢れる。
「起きたか?」
目覚めてすぐに会えるなんて、思ってもなかった。
『え、えーすぅ....』
涙でぼやけたエースが私の頭を撫でる。
「やっと、会えた。」
私は、力いっぱいエースに抱きついた。
『ただいまっ...グスン。』
「泣くなよ。」
そう言って、エースは優しく笑いながら、私にまた深くキスをした。
『おい。アタシがいるのを忘れるな。』
『「....あ、」』
ごめん。
マイ。
『忘れて『殺す。』ぎゃぁぁぁぁ~~』
.....To be continue.