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彼女の不安
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「やっぱりザジだ!なんで?別配達だったのに。」
「思いの外早く終わったからな。帰り道だからここを通ったんだが、まだ終わってなかったのかよ。」
「だって多いんだもん…。」
「文句言う前に動け。」
口では冷たく言いながらもザジは手紙の入ったカバンを私からかっさらっていった。
「…手伝ってくれるの?」
「…マリーだって早く帰りたいだろ。」
「えへへ。ありがとう。」
根は優しいんだよね。私はザジのこういうとこが好きになったんだっけ。ザジが手伝ってくれたお陰で何とか全部配達することができた。
「よし!何とか全部終わったな。ハチノスへ戻るか。」
「うん。あれ?コナーは?」
「なんか他にも寄りたいグルメスポットがあるから先に帰ってだとよ。あいつは本当に食いもんばっかだな。」
「ふふ。そうだね。」
私達は肩を並べて歩いて帰る。今私とザジは二人きり…。私達は会話はするけど、カップルらしいことは今までしていない…ような気がする。だからコナーにもカップルに見られていなかったのかな。
「ねぇ、ザジ。私達って付き合ってるんだよね?」
「今更なんだよ。」
「あのね、コナーに聞いたら私達ぜんっぜん恋人にに見えないんだって。」
「…だから?」
「え、あ、いや、その。こううまく言えないけどなんか恋人っぽいことがしたいなって…ごめんこんなこと言われても困るよね…。」
「そんなことかよ。」
「そんなことって!私ちょっと不安だったんだよ!ザジからの告白は実は夢だったんじゃないかとか、色々不安に…。」
「うるせぇよ。」
私の言葉はそこで止まった。いや、止めさせられたのだ。ザジの唇によって。
「いきなり何するの!びっくりしたよ!」
「マリーが恋人っぽいことしたいって言うからだろ?」
「だからって…いきなり…キスは…。」
「順序すっ飛ばしたのは悪かったな。これが一番手っ取り早かったんだ。」
私はいきなりキスをされて動転してしまい、ザジを置いて走りだそうとしたが、私の腕をザジがしっかりと捕まえた。
「んじゃ手でも繋いで帰るか。」
「な、なんで。」
「マリーが逃げようとするからだろ。早く戻って
マリーがお望みのことしてやろうじゃねぇの。」
「え?あの、ザジ?」
「言っとくが、俺は今まで我慢してたんだからな。恨むなら自分の言葉を恨むんだな。」
「え?え?え?」
その後私とザジの間で何があったかはとても私の口から言えない。が、それから私とザジが付き合っているという噂が瞬く間に広がったのだった。