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花に華を<聖夜の光>you
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24日の夜
今年も、ちいさな小包が届いた。
あけてみると、
わりとリアルな虎のぬいぐるみ。
虎……?
タグを見てドイツのだ…、とすぐわかった。
中学のとき、一緒に吉祥寺をあるいていて
かわいい…と立ち止まったのを思い出した。
まさか
れいちゃん、
あれを覚えていたの?
いつも気にかけてくれる
れいちゃんの優しさに胸がきゅっとなる。
紗也が亡くなってから
れいちゃんはサンタクロースみたいになった。
わたしもプレゼントを、送った。
届いているといいのだけど。
わたしが描いた絵をプリントした
斬新なスポーツタオル(笑)。
だって、きっとプレゼントは
たくさんもらうだろうし
誰ともかぶらないものにしてみました!
と、思った瞬間
ぴるる、ぴるる、ぴるる、
電話。
「れいちゃん?」
「沙良!!!プレゼントありがとうっ!
嬉しい。これって特別に作ってくれたヤツ……」
「よかったぁ、喜んでもらえるか心配だったの」
「喜ぶに決まってるよー。世界で一つのタオル」
「れいちゃん」
「ん」
「わたしも、トラ君とどいたよ。
いま、ちょうど開けて、見てたところだったの。
どうもありがとう。名前つけなきゃね」
「首に、りぼんついてる?」
「うん。すごくきれいな大きいリボン」
「よくみて」
…………指輪が結んである……。
「れいちゃん、ゆびわ……?」
「うん、何年も沙良は
Rペンダントしかしてないから…
いいかげん、新しいのを、と思って
買ってみたんだけど?どうかな」
「あ、あのありがとう。こんな、ふたつも……」
「はめてみて?」
どの指に……と思ったら
右手の薬指にぴったりだった。
金のリング。真ん中にキラキラひかる石。
ダイヤモンドみたいな。
「とっても…きれい」
「いつもつけてね、ダイヤだから!丈夫だから!」
えええええ。
「れいちゃん……」
丈夫ってそんな。
「今晩はどうするの?」
「どう??」
「でかけたりとか……」
「ううん。寒いしもう9時だし。
親がことしもドイツからたくさん
シュトーレンを送ってきたから
これから食べます♪れいちゃんは?」
「お稽古終わったし!ねます!」
れいちゃんは愚痴とか弱音をいわない。
だけど忙しいのを知ってる。
「沙良、」
「うん」
「会いたい。
すごくあいたい。
いま5分でもあいたいな」
そこで、
れいー?という誰かが
呼ぶ声が聞こえて、
……電話が切れた……。
もう!
甘いことを言ってガチャ切りとか!
……そう思ってふと見た鏡の中の自分の顔が
しあわせそうなsmileで笑ってしまった。
れいちゃん忙しいのに
いつも気にかけてくれて
ありがとう。
れいちゃん、ほんとうはわたしも
Christmasのお誘いとか
ちょっとはあるんだよ、
女子高生だもん。
でも
両親からもれいちゃんからも
電話がきて、
あたたかく言葉を交わせるクリスマスの夜を
もう少し大事にしていたい。
虎の名前は
れいちゃんからもらって
ゆず、と呼びましょう。
……Happy Christmas……