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花に華を<朝の光>you
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れいちゃん、あの…これって?!と、
目が覚めた瞬間、
一糸纏わぬ自分にびっくりして
叫びそうになってしまった。
幾度も泊まっている見慣れたホテルの
キングサイズのベッド、
真っ白い清潔なシーツが
くしゃくしゃになっている。
朝の光が閉め忘れたカーテンから漏れて眩しい。
隣には全裸のれいちゃんの、裸の背中。
薄く、でもしっかりついた筋肉が美しい。
白い石の滑らかな彫刻みたいだ。
静かな寝息が聞こえる。
うつぶせで眠っているれいちゃん。
柔らかい金髪、
ほんの数ミリ黒い生え際が見えるのが
なんだかすごく愛しい。
長いまつ毛、
大きな手。
短く清潔に切り揃えられた爪。
こうしてみると…
どうしよう、ものすごくかっこいい。
そして昨晩の事を思い出す。
…部屋に入って、
れいちゃんがきゅうに真剣な顔で
キス…して…それから
それから………。
「真っ赤になったり
真っ青になったりしてどーしたの」
うつぶせで寝ていた筈のれいちゃんが、
その体勢のままニヤリ、と笑った。
「ひゃぁっ!」
「んー。沙良」
力強い右腕で素肌に抱き寄せられる。
「れ、れ、れいちゃんっ。あのっ。あの、っ。」
「おはよ、沙良」
からの、
いきなりキス!!!!!!!!!!!!!!
「れ、れいちゃん、あのっこーゆうのって
恋人どうしがっ」
れいちゃんがクスクスわらって止まらない。
足をじたばたしても
抱きしめた手を放してくれない。
「昨日の夜、なにしたかわすれちゃった?」
「・・・・・・・・・・・!!!!っ」
「声、かわいかっ…むぐぅうぅ」
思わず枕でれいちゃんの顔を抑えてしまった。
「@わ!×M?<#~!!!ダメ沙良、ω▽
っ、沙良マジで死ぬやつだから!これ!」
まくらをはねのけたれいちゃんに
ぐるん、と体をひっくり返された。
わたしの上に覆いかぶさるれいちゃんが
アップすぎる。
「はずかしいの?」
朝の明るい光の中で
くすくす笑う意地悪で綺麗なれいちゃんに
全裸を見詰められて
恥ずかしくない女子がこの世に居りましょうか?!
「はっ、はずかしいよ!それがなにか?!」
「…ふぅん」
そういうと、
れいちゃんはシーツをばさっと体に巻いて
あっという間にベッドの横に降り立ち
わたしを同じようにシーツでくるんで
ベッドに座らせた。
わたしの前にひざまずく。
…れいちゃんは役者さんだから、
なんにでもなれるのは
良く知ってるけどそれにしても
裸にシーツで、1秒で、
どこかの貴公子みたいになれて凄い。
そしてなんのプレイなんですか…。
「沙良、どうか」
まっすぐわたしの目を見上げる。
長いまつげが端正な顔に影を落としている。
「この気持ちと愛を受けとって。
ずっと好きだった」
あまりに真剣な顔で、わたしは理解した。
いつものように軽く答えるところではないと。
何も言えないでいると
上目遣いのれいちゃんがわたしの膝に口をつける。
「正直、『つきあおう』なのか
『結婚してください』なのか
なにがいいのかわからない。でも…沙良、
ずっと一緒にいてください。
会えない時間もあるかもしれない。
でも、お願い。離れないでいて」
ああ。
れいちゃん。
答えはひとつだけです。
「はい」
こちらを見上げてわらった
晴れた空のようなれいちゃんの瞳を、表情を
わたしは一生わすれないだろう。
例えこの先にどんなことがあっても
いまこうしていること
この気持ちがあったことは
永遠に本当。
どちらからともなく
手を、指をからめて
くすくす笑いながら、わたしたちは
もういっかいシーツの隙間にもぐりこんだ。
「朝ごはん、なにたべる?」
「おなかぺこぺこ。から揚げとごはんが食べたい」
「ポテトサラダもたべちゃおうか」
「うん!」
ねえ、とれいちゃんが言う。
なぁに、とわたしが言う。
ふたりで目を見合わせ笑ってしまう。
たのしくてうれしくてやすらいで
朝の光がいっぱいのベッドに
わたしたちの笑い声が混ざって満ちる。