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はなにはなを②rei
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「れいちゃん、歌がんばったーぁ✨」
幕が降りて
さゆみさんから
歌をほめられた。
そんなこと、いままでなかったこと。
でもとにかく必死で
お稽古を重ねていたから
嬉しかった。
「あっ、ありがとうございます!」
「さいきん、カッコよくなったし。
写真撮りとかも前よりもっと熱心だし
なにがあったのかなぁー…って」
にこーっ、と笑うさゆみさん。
たぶんなんでもお見通しなんだ。
耳が熱い。
「いいことあったんでしょ」
……っ……
めくるめく「イイコト」を
思い出しちゃっ……た……。
「顔赤いし。ふふ。よかったね。
応援してたんだ。れいちゃんが
なが~く、ずっと一途なの、
なんとなく知ってたから」
そうか……
そうだよな……知ってらしたのか。
「ありがとうございます。
なんか……好きな人と
前より仲良くなれた感じで。
急に世界の色が変わって見えるっていうか…。
浮かれてるのかもしれないけど
なんでも、もっと綺麗に見えるんです」
さゆみさんは
可愛らしく肩をふるわせて
くっくっ、と笑った。
「れいちゃん、それ恋!」
えっ、こ、恋?!
その言葉を脳内で反芻していたら
じゃ、お先にぃー、と
さゆみさんは小鹿のように去っていった。
そう、さゆみさんて
森で会える美しい動物みたいなんだよな…。
そんなひとに、
嘘とかつけないよね。うん。
恋かー。
そっかそういう呼び方があるのか。
……はやく、あいたいな。沙良。