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花に華を<雨の光1>rei
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沙良は強い。
そこも
ほんと
すきだよ。
梅雨は嫌いだ。
この厚い雲の上は晴れ渡っているのだ、と
沙良はいつも言う。
直に光に触れられないなら
雲の上が明るくても暗くてもおんなじじゃん?!
と、反論するわたしを
沙良は笑って
いやいや、ちがうよ、れいちゃん、と諭す。
毎年梅雨時のやりとり。
あれ…
なんでこんなこと思い出すんだろう。
そう思ったとき、揺れた。
大きく揺れる。
窓を開け携帯と眼鏡を確保。
それからパーカーを羽織る。
揺れが止まる。
テレビをつける。
震度、震源は?
カーテンの外を見て、とりあえず
大きな変化はないことを確認する。
すぐLINEで、メッセージをいれる。
〈こっち、地震あったけど
しんぱいしないで。沙良。
よい1日を。いつも気をつけて!
夜でんわするね〉
それから、
沙良が好きだといった
へんなネコのstamp。
よし。
とりあえず、はやめに出て
お稽古場の様子見て
あ、実家にも連絡しておこう。
雨がやまない。
お稽古場で会うみんなは無事で
阪神淡路を知っている方々は青ざめ、
それを知らないわたしたちは
2011年を思い出した。
あの日
家族とはすぐ連絡できた。
でも
沙良とは連絡できなかった。
ほんとに探しにいく寸前で
新幹線も動いてないからと皆に止められて
翌朝、帰宅できずに学校に泊まったという
沙良の、声を聞いて
安心して大泣きしたのち、つい怒鳴って
沙良も泣いて
大変だったこと。
あたりまえのことはあたりまえではない。
あたりまえに、見えているいまこのぜんぶ。
紗也に教えられ
あの日にも教えられた。
今朝…だれも怪我をしたり
被害にあったりしていませんように。
花組?劇団?お客様?
いや
揺れたところにいたぜんぶの人。
どうか。
そしてみんな夜には
愛しいひとに「おやすみ」と言えますように。
そう祈って今日を始める。