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花に華を<水無月の光>rei
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夕方、沙良からのLINE。
珍しい、こんな時間に。
〈れいちゃん今日はお仕事何時まで?〉
え。
珍しいことを聞いてきた…
沙良?
どうしたんだろ。
そもそも平日昼間のLINEが変。
だって会社でしょ?
…。…。…。
ダメだ心配…。電話だ、電話!
「はい、もしも
「もしもし沙良?れいだけど。
19:00には帰れるよ?
なんかあった?だいじょうぶ?
夜じゃなくていい、いま聞くよ?」
「ぁ。……え、と」
しまった前のめりに話しちゃった。
落ち着こう落ち着こう。はい、ひと呼吸。
待て、自分。
「あの、いまね」
「ん」
「梅田駅に居るの」
「え?!」
えええええ?!
「急にサウジからのお客様が成田着から
関空着になっちゃって…………」
「18:30」
「え?」
「18:31ぷんに終わるから!」
なにこれ、こんなに急に会えるとか。
「こっちまでこれる?うちまでこれる?よね?」
「う。うんっ」
全然使うチャンスがないけど
沙良には合鍵を渡してある。
お財布の内ポケットに
勝手にわたしが入れたんだけどね。
「鍵持ってるよね?」
「鍵……うん、、お財布にいれたまま」
「うちで待っててね。
大したものないけど
あ。もも!冷蔵庫に桃あるから!」
「♪桃っ」
電話の向こうで声が弾んだ。
あぁ可愛いな。ありがとう桃。
沙良いわく、
日本の桃は世界一、だそうで。
昔から沙良は
桃があるとにこにこしてる。
ほんと、かわいい。
もうなんか午後のお稽古とか
プチ収録とか
頑張れすぎて怖い。
だって居残りとか無理。
今日は帰るぞ!
「あー、れぃ、今日帰りにごはんとか」
「悪い、今日はダメ」
だって
待ってるひとが、居るからね。