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花に華を<水無月の光2>rei
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「ただいまぁーーーー」
「おかえりなさいっ、れいちゃん」
ドアを開けたら沙良がいる。
いや、わかってはいたものの。
こ、これは……ユメ?
ほんとに夢みたいだ。
「沙良、いつまでいられるの?」
「明日の朝まで」
「みじか…」
「でも、会えたねっ♪」
沙良の笑った顔。
ほらまたキレイになった。
……でもなんか、なんだろ?
ほんのすこし痩せた、かも。
「れいちゃん。かんたんだけどゴハンあるよ!」
「!え、つくったの?」
「お味噌汁と、鮭を焼いただけなんだけど…」
「嬉しい」
……なんか一気に特別な日になった。
すごいな……
もうこれ、パーティーだな……。
「れいちゃん?」
「わ。おいし……」
ほんとにおいしい。
沙良が炊くお米は最高。
沙良が切ってくれた漬物も最高。
「おかわりたくさんありますよ。
あとね、デザートはねぇ……」
「沙良でしょ」
「いいえ、れいちゃんです」
「え?……えええええっ?」
「……というのはじょうだんです、桃!」
「たべてなかったの?」
「いっしょに食べたかったの」
次は桃、1ダースくらい買っておこう。
「こんなに急にこっちで会えるなんて
はじめてじゃない?」
「わたしも、びっくり」
「仕事大変?突然、関空ってさ……」
「んー、忙しいけど楽しい。
基本的には絵を描いてるわけだし」
「でもわざわざ関空?」
「ときどきね。
デザイナーと直接会いたいっていう、
海外のお客様がいて。そんな方は
産油国の王様一族だったりするんだけど」
「王様でも沙良を呼びつけるなんて!」
「でも、おかげでいまここにいられるから」
……はぁ…
そうは言っても
疲れてるだろうな…。
「おふろ、おさきにどうぞ」
「れいちゃんこそ、って言いたいけど」
「うん」
「譲りあいの時間がもったいないので
どうもありがとう、お先にはいるね」
「沙良の家だったら
いっしょに入れるのに残念。
ゆっくり、はいっておいで沙良」
「ありがと、れいちゃん」
ほんと残念。
よし、将来がんばって
大きなお風呂買おうっと。
桃でしょ、お風呂でしょ、
沙良は欲しいものとか
教えてくれないからな。
メモしとかないと。
ベッドだって、
沙良が頻繁に来てくれるかと
期待満々で、奮発して買ったんだけど
残念ながらあんまり活躍してない。
でもこんな夜は
……買ってよかった、ほんと。
もうはやくいっしょに居たくて、
速攻お風呂を済ませた。
ゴロゴロいっしょに転がりながら
いろいろな「嬉しい」を噛みしめる。
んー。さいこう。
「れいちゃんのベッドふっかふかだねぇ」
「でしょ?沙良と寝ようと思って
選んで買ったんだからー」
ほんとかなぁ、と
沙良がくすくす笑うので
ほっぺをつねる。
「もぉ、れいちゃんてば」
はぁ…。やっぱり電話よりLINEより
会えるとたのしい。
でもほかにも
たくさんしたいことがありすぎる。
とりあえず、キス、だ。
「…ん」
あごをちょっと右手で引き寄せて
わたしが首をすこし傾ける。
ひさしぶりの、唇。
キスって気持ちいい。
漏れるため息が
どっちのものかわからないほど
ふたりで混ざる、この感じが大好き。
「は……、ぁ、」
沙良がちょっと苦しそうに息を吸う。
「沙良、ごめ、夢中になってつい……」
肺活量も体力も身長もぜんぶ
沙良のほうが少なくてちっちゃいのに
嬉しくて、つい……。
大きく肩を上下させている沙良は
目が潤んで頬が赤くなって
なんだか…堪らない気持ちになる。
だめ、もっと触りたい。もっと舐めたい。
もっと、撫でたい。もっと…、
「れいちゃん」
「え」
沙良の手がTシャツの下をくぐり
肌にふれる。
わたしの……胸だ…よ……ね、そこ。
あんまりナイけど。
あ。
あれ。
これ、
なんかすごくはずかしい…、
けど
沙良が触るのなら
振り払ったり
とめたりできないから
なされるがまま。
観念したところで
沙良が耳に口づける。
強く、弱く、舐めて、甘く噛んで。
それをしながら
さっきよりすこし強く胸を撫でられると
ぞく、っとした。
あ、なんかこれやばい、かも。
「っ…は」
思わず声をあげる。
そんなわたしの目を
じっと覗く沙良の表情が
色っぽい、と思った。
いつのまにこんな
おとなの女のひと…みたいになった?
沙良?
そうしているうちに
耳元の沙良の呼吸も乱れてきて
あ。沙良も興奮してる、と思ったら
その舌の感触だけで全身がぞくぞくしてきた。
なにこれ、知らない。
「ん…沙良、っ…、は。ん…ぅ」
…この声、恥ずかし…い。
でもダメ、押さえられない。
「れ…ちゃん。そのこえ…」
「んっ、で…ちゃう…」
「その、声…すき」
つぎの瞬間、胸に
触れるか触れないかのキスをおとされた。
沙良の息がかかる。
「ぁ …、 んっ」
きもちよさに流される。
こんなの
だれにも見せられない姿だ…。
あぁ、でも。
沙良になら。
「れいちゃん、だいすき」
優しく囁やかれて
乳首にキス。
ちゅぅっ……という音が響く。
「!っ……んっ。 あっ、あっ、あっ」
こんな声、だれにも聞かせられない。
けど。
沙良になら構わない。
沙良の指先がもう片方の胸を
優しく撫ではじめた。
ときどき、きゅっ、と摘ままれると
もう、……むり……。
「は…… っん」
吸いながら転がされて
それを幾度か繰り返されたら
きもちよさに痺れはじめたからだが
跳ねて
なにか大きな波に
押しきられる。
もうなにも抑えられない。
あたまがまっしろになった。
「れいちゃん」
目を開けると沙良と目が合う。
「きもちよかった……?」
「う、ん……。よか…った。
沙良急にどうしたの、こんな……」
「よかった。
わたしも、好きな人を、さわりたかったの」
すごく嬉しそうに沙良が笑顔をみせる。
それをみたら、幸せでくらくらした。
横になったまま、
そのちいさな手をとって口づける。
「ほんと、すごいお姫様だったよ、沙良」
沙良が心地良さそうに目を閉じる。
「れいちゃんわたしも、
すごく……きもちよかった……」
沙良が満足そうに甘いため息をつく。
ほらね。
ほら
沙良はミラクルなんだ。
どうしよ。
このまま眠るのも気持ちいいんだろうけど
もうすでに最高すぎて怖いんだけど。
…ちょっとだけ…
今夜、沙良の声も聞きたい。
欲張りすぎかな。