-
花に華を<明けの光>rei
-
台風続きの「夏の終わり」が終わってく。
…また最近
沙良の咳がでてきた。
「一緒に、寝よ?」
「……」
口がへの字になっている。
最近、どこでお泊まりしても
キスしても、もっと色々しても、最後は
違うベッドで眠る沙良。
正直、寂しい。
「沙良の咳ぐらいじゃ起きないし
わたしも舞台あるから勿論きょうは
……な、なんにもしないよ?」
……しまった噛んだ……。
「う、ん」
笑ってくれない。元気ない。
ちょっと悲しそうな顔をする沙良。
最近食欲もないみたいで。
東京に戻ったのも関係あるかもしれない。
だってやっぱり、兵庫のほうが
空気がいい。
「今年は暑くて、台風も多いね、れいちゃん」
…話題、変えてきたし…。
「うん、そうだね……なんかちょっと変だね」
「いつもお天気の心配してた夏が終わるね」
「中学生以来、沙良と
たーっぷり一緒に居られた夏が終わる」
「楽しかったねぇ」
「沙良も楽しかった?よかった」
顔を近付ける。
「ね、信じられないんだけど」
「なに?」
「まだメサイア、観てくれてないことが」
「……だって…、」
「でも東京公演は、来てくれるんだよね?」
「…、…」
「沙良……?!」
……沙良の目にみるみる涙がたまって
たちまち、溢れて、こぼれた。
…なんか、変なこと言った?
どっか痛い?
なんかあった?
どうしよう、
「沙良、っごめ、ごめんどーしたの」
「ぅ……ひっく、…せ…き。ひ… ん、の……」
ずっと一緒にいたから
何でも聞き取れる。
……もし、咳がとまらなくなったら……
ほかのひとに
めいわくだって思っていけなかったの、
ごめんなさい、れいちゃん……
!!!!わたしのバカっ!!!!!
咄嗟に抱き締めて、お姫様だっこして
沙良の寝室までの階段を上る。
「れ、いちゃん……?」
まだ目に涙をためたまま、
びっくりしてる沙良を
ベッドにおろして……
ぽいぽいぽいっ、と自分の服を脱ぐ。
勿論ぜんぶ。下着も。
それから沙良のも。
沙良はびっくりしすぎて、抵抗しない。
おふとんにもぐりこんで
沙良を、抱き締める。
やわらかくて、いいにおい。
そして言わなきゃ。
どうしても、どうしても、大好き。
「ごめん、沙良、わたしバカで」
「?え?ばかじゃないよ…ど、どうして…」
「今こんなだけど、ぜったい成長する。
努力もする、だから……っ」
やばい、なんか泣けてきた。
「?!れいちゃん……?泣いちゃダメ、
あしたお仕事、」
「だから、ずっと一緒にいて」
「う、うんっ!」
真ん中とか前の席とか
だれでも喜ぶだろうって
当たり前のように思ってた。
でもみんな色々な事情がある。
「…沙良、あの、出入口に近い席とか
どーかな……通路隣とか」
沙良が、やさしく笑ってくれる。
そうなんだ。いつも。
実は。
甘やかされているのはわたし。
ときどき不安になる。
この綺麗で聡明な女の子のが
だれかに拐われちゃうんじゃないかって。
「れいちゃん。だいすき」
「沙良。だいすき」
不安をキスで埋める。