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花に華を《Hollow Columns》you
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ひさしぶりの、
伊丹空港に降りたら…
れいちゃんがいた。
マスクして帽子を深くかぶって。
でも…、にこにこしてる目が見えてる。
長い脚で駆け寄って来て
「やっと会えた」なんて耳元で言うものだから
寒いのに、………暑くなった。
わたしが嬉しくなって
自分のマスクを 外そうとするのを
れいちゃんが止めた。
「マスク、まだ、しててね。沙良?」
「う、うん」
それから自分のマフラーを外して
くるん、と頭から巻いてくれた。
…イスラムの人みたいになった。
れいちゃんは
東京にいるときより 目立つ。
それなのに、
きゅっ、と手を繋いでから
反対の手でわたしの荷物を持ってくれる。
「おいで、沙良、こっち」
足早にタクシーに乗る。
ドアが閉まり、行き先を告げて車が走り出す。
やっと、ふたりでほっとする。
「…ようこそ。おかえり、沙良」
言いながら、
わたしの手を握るれいちゃんは
久しぶりのせいか…握る力が強い。
「………忙しいのにわざわざ空港なんて…ごめんね」
「そんなこと言わないで、来たかったんだから」
「………」
「…1秒でもはやく会いたかった」
「…///………も…。」
れいちゃんが、ニヤリ、と笑う。
「なに?もいっかい言って♪沙良?」
「わ、たしも…」
れいちゃん………ぜったい面白がってる…。
「聞こえないよ…」
運転手さん、聞いてるよ?!たぶん。
顔から火が出そう………。
「顔、赤くなってる。可愛い………沙良♪」
ひさしぶりだからか
顔を近付けられると、心臓が爆発しそう。
ああ。ひさしぶりの、れいちゃんの声。
温かい手と、いいにおい。
そっか、わたし。
平気だと思ってたけど
すごくすごく会いたかったんだ、と
ふいに気付く。
「沙良………?」
ちゃんと言わなきゃ。
幾度も呼んでくれたのに
幾度も「短いけど寄ろうか?」とも
言ってくれたのに。
ちゃんと言わなきゃ。
わたしも会いたかった、って。
それから。