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花に華を《 Triangular Crystals 》rei
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タクシーに乗って3分。
………沙良。寝ちゃった………。はやい。
たくさん話すことがあって
聞きたいこともあって。
………でも
隣で安心しきった様子で
寝息をたてている沙良。
去年、あの女性に何か言われた?
どう考えても意地悪な感じだったけど
でもなんで沙良に?
沙良とわたしが居るのが
気にくわないとか?
いやまさかそんな、ストーカーみたいな………。
………。
………無くは、ないか。
いろんな人がいる。
沙良が何か言われたなら
どうしてひとことも相談とか
連絡とかしてくれなかった?
沙良がもっと
甘えてくれればいいのに。
甘えるまでいけなくても、せめて
頼ってくれればいいのに。
………あ。ヤバい。
なんかネガティブになってきた。
こんな近くに居られるのに。
いやな気持ちとか無しすぎる。
そう思って横を見ると
本当に薄くしかメイクをしない沙良の頬は
赤ちゃんみたいにフワフワして眩しい。
可愛い。
日に焼けたことがない肌は
少し強く触れると赤くなってしまう。
…。そんなの知ってるの
わたしだけなら良いんだけど。
…だけ、だよね?
マンションの地下まで
車を入れてもらうことにする。
起こしたくないし
お姫様抱っこの出番は今。
………眠り姫ちゃん。
このまま朝まで起きてくれなかったら
どうしよう。
キスくらいしても許されるものなのかな。
いやいやいや。ダメだダメ。
そんな邪念たっぷりで
ひょいっと持ち上げたら
沙良の目が開いた。
おはよう、
明日は休みなんだよ、沙良。
「あ、れ…。れいちゃ…ん?」
寝ぼけてる。ふにゃふにゃだ。
数秒遅れて
抱かれてる自分にびっくりしてる。
「わ、ひゃっ!!!!!!降りる…!」
「ハイ、お姫様」
降ろしてあげてもまだ眠そうな沙良の
手をひいてエレベーターのボタンを押す。
「わたしの部屋でいいよね?」
「うん。。あの、ちょっと寄ったら
自分の部屋に戻る…ね。荷物をあけなきゃだし」
………こんなに久しぶりに会って
………どうしてちょっと?沙良?
情けないけど、
軽くうまく返事ができない。