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花に華を《さくら》rei +
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『CASANOVA』は
沙良のお気に召したらしい。
「えっと………あの。東京公演も行く、ね」
すごい珍しい。自分からそんな。
嬉しくてニヤニヤ………しそう…。危ない。
「そんなに楽しかった?」
「うんっ!」
そうか、…そうだよね。
ポーとか天草四郎とか
悲しすぎたね、沙良。
どちらにしても家族が死ぬとか消えるとか、
ちゃんと観てくれたけど
でも、何度もは来てくれなかった。
「前で見る?」
「ううん、うしろがいいの」
「承知しました。仰せの通りに」
ゴハン食べながらも
あの綺麗なレースは革なのね?とか
れいちゃんのマントは重たくはないの?とか
水色があちこちに沢山あって
ほんとに凄い、とか。
興味津々だ。
なんにしても嬉しいな。
長髪好き?それともマント姿………?
「………あの…。れいちゃんの奥様は………
ずいぶん…綺麗、ね」
………………!………!
沙良、こ、これはどっちの方向。
「え、えっと。そうだね(にっこり)」
(気になる。気になりすぎる。
あれかな、イケメントークだと
「沙良の方が綺麗だよ」て
いうべきところ?
でもなんか違うような予感………)
「お名前………」
「鳳、
「あ!わたしパンフレット買ったの♪」
!ええー!!
いそいそと、
大劇場のパンフレット出してきて
ちなつさんを見つけて
「いたっ♪」とか言ってる………。
なんてこった。
敵は本能寺にあり、みたいやつ?
たしかに………カッコいいし綺麗だし
歌も芝居も素敵で脚長いよね。
「鳳月、杏さん……名前もすてき」
あぁ、
沙良、目がハートになってるよ?!
ほんとにこの世は油断できない。
………………………………………
へぇー、それでどうしたの?
ちなつさんが
のほほん、と聞く。
「かなーり落ち込んでんのや。な!れい!」
みなみが横から余計なことを言う。
落ち込んでないってば。
「れいちゃん、がんばらないとねぇ」
さゆみさんも……面白がってる。
「…ポストカード…つい、買ってあげたら
超よろこんでました…」
「敵に塩送っちゃダメだよぉ」
「いや、敵っていうか、べつにわたし
登場も参戦もしてないですし。」
ちなつさんが言う。
はい、ごもっともです。
はぁ。
「…あ。でも、
博多でちょっと見かけた、あの子でしょ。
すっごい可愛い子だったよねー」
「やめてくださいよ、ちなつさーん」
ほんと、
冗談にならないから。
はぁ。わたしもたいがい、心狭いな…。
楽屋口を出ると、外はやたら
風が強い。
今年の桜は長く咲いてる。
明日はものすごく寒いらしい。
…ちゃんと厚着して来るんだよ、って
沙良にLINEしよう。