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花に華を《lumière blanche》rei
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東京一望の夜景を見ながらおもう。
可愛い子なんていくらでもいる。
花娘なんて
もうほんっとに可愛いし
男役だって見渡せば
正真正銘の美女ばっかりだ。
まぁ………その中でわたしは
「特徴的な顔」ってやつらしいけど。
うん。自分のことは置いておこう。
つまり言いたいことは。
沙良はほんとに可愛い。
10年以上見てるけど
「ずっと変わらない」じゃなくて
どんどん可愛くなる、んだ。
自慢の恋人!とか
呑気に言ってられなくて。
見ず知らずの男が沙良を見る。
例えば街で。
例えば空港で。
ほんと……
気持ちがわかるだけに嫌だ。
そして常に心配。
そんな沙良は呑気なもので
直近で興味を示したのは
女役のちなつさん、
だったりするんだけどね。
ある意味、
そっちは安心なんだけど。
(ちょっと焼いたけど)
そんな感じで……今も
忠犬のように
その可愛すぎる恋人を待ってる。
ほんとはお家でご飯だったんだけど
急な残業だって聞いて
忙しくないほうがいいかな、と
久しぶりに恵比寿のウェスティン。
お風呂にお湯をためたり
ルームサービスで苺頼んだり
ストレッチしたりして
待っているのは、楽しい。
けど。23時。
いい加減、仕事でも駄目でしょ。
沙良に連絡を……
と思った瞬間
LINE………の、通話が光る。
沙良、だ。
通話なんて滅多にない。
左手で上着をつかみながら
〈通話〉をタップする。
足はもうドアに向かってる。
沙良の声。
様子が、おかしい。
居場所を聞く。すぐ近く。
ここから、5分?3分?
部屋を転がるように飛び出して
エレベーターが上がってくるのを待つ。
すごく遅く感じる。
意味なくボタンを幾度も押してしまう。
やっと乗って、
扉が開いた瞬間から、
人生でいちばんはやく走った。
駅方向に向かう。
なにか、落ちてる。
床に落ちた携帯が見えて
水色の靴が片方……。
なにも聞こえない。
なに?どっち?どこ?
一瞬だけ聞こえた……。
微かに、
でも確かに沙良の声。
「沙良っ!人呼んだから!」
これ以上ない大声で叫んでみる。
男性用の洗面所から
誰かが飛び出していった。
あそこ?
沙良が倒れて、る。
頭が、しゅっ、と
沸騰する。
抱き起こすけど
……服が滅茶苦茶で
とりあえず肩や胸を隠すけど
ボタンが……千切れて、無い。
唇、切れてる。
頬、叩かれた跡?
首は指の跡とみみず腫。
震えてる……沙良?
違う。
自分の手だ。