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花に華を《 ふたりしずか 》you
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れいちゃんが…固まった。
どうしたのかな。
大好きな唐揚げ晩御飯で
上機嫌だったのに。
そして
淹れたての玄米茶の香りで
お部屋は幸せな感じなのに。
……食べ過ぎてお腹、いたい?
「……れいちゃん?」
「……」
「どうかした?」
「こ、れ……」
「あ!」
ついつい、
おもしろくて買ってしまった
〈れいちゃん付箋600円〉
…見つかっちゃった。
「つい、買ったの。かっこいいから…」
「…へぇ…」
赤くなってる。
かわいいれいちゃん。
もうちょっと言ってみよ。
「あ。会社で使おうかなぁ。
しごと捗るかも…」
「や、沙良?
さすがにそれは…さ」
……照れてる……!
「一枚だけなら、あげますよ~♪」
「いらないし」
れいちゃんの照れのバランス、
さっぱりわからない。
でも照れ屋さんだと思う。
昔から。
「デスクに貼って、
いつも顔が見られて
良いなぁって、思ったんだけど」
「……付箋だよ……?それ」
「?」
「本物はこっち」
「しってます」
ずいぶんお馬鹿な会話なのだけど
れいちゃんが、キリッと話すから
すこし笑いそうになる。
「あ。甘いものがあるの」
「沙良でしょ?」
「もぅ、そうじゃなくて
会社の頂き物で……これ、」
和三盆のお菓子『二人静』
「あ」
れいちゃんの目がきらっ、とする。
「それね、沙良に似てるやつ♪」
………………?
「似て…?」
フフン、と、笑うれいちゃん。
全然意味不明。
もしや…
顔がまるいって、いいたいのかな?
れいちゃんと比べたら
誰だってまるいですよ。
「似てるよ」
「……そうなの?」
「そうだよ、食べてみて。わかるから」
ふんわりと柔らかい
包み紙をほどくと
ころん、とした 小さなまるがふたつに別れる。
ピンクと白。
とてもきれい。
れいちゃんが片方をつまんで
わたしの口にいれる。
「……っ……沙良」
「、、?」
「ナチュラルに指舐めちゃダメ…だよ///」
「うん…」
口のなかで甘さが広がって
ほろりと溶けて
美味しい余韻を残して消えていく。
繊細で、ちゃんと甘かったのに儚い。
もうひとつ、食べたいな。
……って、
……/////
「沙良?顔があかくなった」
「…、れいちゃんが…ほめてくれたから」
れいちゃんはニヤリ。
「意味解ってくれて嬉しい。似てるでしょ」
「ほめすぎ」
「わたしも食べたいな」
残っている半分をつまんで
れいちゃんの口に運ぶ。
わたしには、
舐めちゃ駄目って言ったばかりのその口が
駄目って言ったことをしてる。
「ん」
れいちゃん、
似ているのはたぶん。
この甘いお菓子に似ているのは
わたしではなくて
この瞬間ではないかしら。
溶けていく今に似てる。
「すき?」
「すき」