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花に華を《 sketch 07》
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どうしようもなく、
人恋しい夜がある。
忙しいから滅多にないけど
ふとしたときに、
ある。
「沙良」
「なぁに、れいちゃん」
「忙しい?」
「うん、ご飯の支度するから」
「……少しだけ、沙良…」
両手を伸ばして呼んでみる。
沙良が、こっちに来る。
「どしたの?」
引き寄せて…とりあえず、抱き締める。
「??、??」
よかった、沙良は
ちゃんと、ここに居る。
確かに、腕の中に居てくれてる。
「お腹すかない?の?れいちゃん?」
…でもお姫様は
台所が気になるみたいだ。
時間が惜しい、な。
「ピザでもとろうか」
「え、ピザ?」
「うん、もしよかったら」
沙良はピザが好き。
カナダで子供の頃食べてたらしい。
「ピザ♪」
お。上を向いてくれた♪
思わず、ぱくり、と
ピンクの唇を食べてみる。
「…」
沙良の目がびっくりして丸くなる。
甘く噛む。…柔らかい。
舐めてみる。…柔らかい。
「っ…ぁ…」
右手で腰を抱いて
左手で頬を包む。
くっついて、もっと。この隙間を消したい。
歯も舌も唇も、丁寧に舐めていくと、
沙良の身体の力が抜けていく。
頬から耳を撫でる。
ああ。これも食べたくなってしまう。
誘惑に勝てず、かわいい耳たぶを噛む。
それから舐める。
くちゅ、って音がする。
「ん。ぁ」
膝がかくん、てなった沙良の
体重を、受けとる。
「ぁ…んっ」
この声。
わたしだけが知ってる声。
そっと胸に触れる。
目が潤んで頬に赤みがさしてきて
…キレイだなぁ。
「れ、いちゃ……ん」
「沙良かわいい…、…かわい…っ」
「ん」
だんだん噛みつくキスになる。
きっと、今日は雨だから
配達はいつもより時間がかかる。
ピザが来るまで…
沙良をこうして、独り占めしよう。
「れいちゃん…あの、」
「ん?」
「だいじなこと…」
慌てて腕の力を緩める。
「ピザ頼みましょう…」
!
そうだった。まだ注文してなかった。
沙良が笑うのを聞きながら
携帯に手を伸ばす。