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花に華を《 violette 》you
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…やっと、退院した。
梅雨は去り、遅い夏が来て
目眩がするほど暑い。
だから
かき氷。
「沙良~!」
「はーいっ」
「シロップはね、イチゴとブルーハワイ!」
「迷う……」
イチゴはわかるけど
ブルーハワイって何かな……。
「どっちも食べたいね」
「うん…混ぜちゃおう、か」
「え、ちょ、まって沙良っ?」
…あれ………変な色になっちゃった。
「沙良……デザイナーのくせに
…すっごい色つくったね?」
れいちゃんが呆れて笑う。
「う…(´-ω-`)」
「じゃぁ、ほら。こうしよ」
れいちゃんが手早く
わたしの氷にイチゴ、
自分の氷にブルーハワイをかける。
そっか、
途中で交換して食べればいいのね。
「途中で交換ね。
あ、イチゴおいしい…」
「どれ?」
……………………!!
れいちゃんの口はスプーンじゃなくて
わたしの唇に降りてきた。
キスがつめたい。
と、思ったら
熱い舌が入ってくる。
「んっ」
「……ふ……」
「ぁ……」
「イチゴ美味し……い」
甘く噛まれる。
ずっと体調を崩していて
こんなふうにキスするのが久しぶりで
……心臓の音がすごい。
あ。
二重奏。
れいちゃんも、だ。
「……ご。め……沙良…、
なんか、ひさしぶりで加減が……」
食べられてしまいそうなキスも
いつ以来かな。
そっと目をあけると
…れいちゃんが目を閉じてた。
眉間の皺がすこし苦しそうで
れいちゃんの手が
ぴたっ、と止まった。
そして、ふいっ、と身体を離した。
離れると、よく見える。
緊張するくらい整った美貌。
れいちゃんの潤んだ目と
いつもよりすこし荒い呼吸は
…魅力的で綺麗で…身体が熱くなる。
さっき引寄せられた手の感触が残ってる。
「よいしょっと」
「……れい、ちゃん」
「かき氷…たべよ、溶けちゃうよ沙良」
どうしよう。
……身体が……れいちゃんにもっと触りたくて
触って欲しい。でも、でも。
でもれいちゃんから、離れた。
こういうときはどうしたら……?
「あのっ!れいちゃん!」
きょとん。と、わたしをみる。
ええい、
「行為を続けたいと思います!」
「……ぇ……///……沙良……」
きょとん、としたれいちゃんは
笑いだして、涙目に。
「言い方…。もー、反則でしょ沙良、」
…ていうかポロポロ涙をこぼしてる。
「////…笑いすぎ……」
とても恥ずかしくて
自分が赤くなってるのがわかる。
「沙良、」
きつく抱き締められた。
「げんきに、なって…よか、た……」
…もう、笑ってない。
「う、うん」
「心配で…ほんとに…っ、こわかっ、」
「うん」
「さっき、身体心配で我慢した…」
声が震えてると思ったら、
涙が、雨みたいに降ってきた。
ごめんね、
れいちゃん。
できるだけ強くだきしめる。
れいちゃんが泣き止まない。
わたしのせいだ。
入院したとき
心配させまいと思って
連絡しなくて
また傷つけた。
ずっと
たくさん
心配させてごめんなさい。
「かき氷、ね。れいちゃん」
涙を親指でそっとすくって
優しく形の良い頭を撫でる。
いつも、そうしてくれるように。
「うん」
「氷が、色のついたお水になりましたよ」
「…また作ろ…?」
「うん」
「でも…その前に沙良、ベッド行こう」
まっすぐに見詰められる
視線がとても、熱い。
どうしてこんなに愛しいのかわからない。
「……ここで、すぐ、がいい」
「え…」
れいちゃんの喉が、ごくん、と動いた。
どんなにすきか
伝えられるときに
伝えたいの。