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花に華を《降水確率100% 》you
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…忙しくて
ちょっと疲れていて
うまく断れなかった。
だから
早く帰りたい週末の夜に
赤坂にいる。
お食事会だと言われて来たら…
男性5人、女性5人。
……これって、お食事会?
しかも何人かはテレビ局勤務とかで
すごく…賑やか。
「沙良ちゃーん、休みの日とかなにしてるの?」
「え、と…普通にご飯作って」
「え!じゃあ今度食べてみたいなぁ!得意料理は?」
「唐揚げです」
「俺、唐揚げ大好物~」
声が大きいなぁ。
距離が近いなぁ。
どう流したものかわからない。
ちらり、と時計を見る。
れいちゃんも今晩お呼ばれ、って言ってた。
遅くなるのかな。
れいちゃんは最近、
前にも増して忙しい。
「そういう立場。責任もって頑張る」と
笑っていたけど。無理しませんように。
「……じゃあ、乾杯。
沙良ちゃんは烏龍茶ね」
飲んで、気付いた。
……アルコールだ。
「こ、れ?」
「あ、烏龍茶烏龍茶♪」
嘘。すごく喉が熱い。
ちらり、と携帯をみるとLINE
れいちゃんから。
〈台風がきてるから、
もし外に居るならはやく帰って。
遅くなるかもしれないけど
夜行くね。寝ててね!〉
〈うん。れいちゃんも気を付けてね〉
返信。よし、っと。
「 沙良 ちゃん顔赤い!」
「え……」
そう、わたしはお酒が飲めない。
というか、人生で薬を飲んでる期間が多くて
お酒を飲むチャンスがないまま
こんな歳になった。
「かわいいなぁ。彼氏居ないって本当?」
やっぱりこれは、お食事会という名の
「合コン」ですか……!
さっさと抜けなきゃ。
「ふたりで、抜けない?」
耳元で囁かれる。
いやいや、ひとりで抜けますよ。
「あの、犬にゴハンやらなきゃいけなくて。
すみません。お先に、失礼します」
立ち上がったら
心臓がバクバクして、
よろけた。
すかさず
身体を支えられる。
「大丈夫です」
「いやいや、遠慮しないで。送りますって」
そんなやりとりをしながら
手を振りほどきながら、廊下に出る。
わたしの身体を支えてる…と思ったら
その手が胸に触れてる。
わざと?
「やめ…」
「あぶないよ。こんな、ふらついて」
「だいじょぶ、です」
「ね。胸、おっきいね。細いのに、すご…
「さわらないでくだ」
そのとき、廊下を隔てた襖が、
スパン!と開いた。
「…… 沙良 っ!!」
「れいちゃ…」
すごく怖い顔のれいちゃんが
仁王立ちで、そこに、居た。