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花に華を《降水確率100% 》rei
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最近、
お呼ばれが増えた。
今日はお稽古のあと、
赤坂の料亭…敷居が高くて
とても普段は入らないようなところ。
個室で緊張しないでいられるのは
みなみと、一緒だから。
陽気なマダムとご主人と
それからお友達と。
お世話になる方々ばかり。
沙良は残業の金曜日だけど
はやく帰るようにLINEした。
台風が関東直撃って、いってるし。
二次会の予定だったけれど残念ね、
台風が来ているから、
今日はお開きねぇ、と
マダムが笑う。
「いよいよね、これから頑張ってね」
「ありがとうございます」
……え。
沙良の声が聞こえた。
…まさかの、幻聴?
やばいな……疲れてるのかな、わたし。
「あの、先に出て……、玄関でお待ちしてます。
ちょっと…美味しくて頂きすぎました。
酔い覚ましてます。すみません」
挨拶して部屋を出る。
内廊下の障子をあけて、
通路に出ようとしたとき
やっぱり、
沙良の声がした。
聞き間違える筈はない。
それに続いて、
「沙良ちゃん、胸おっきいねぇ細いのに…
思わずスパン!!!!と力一杯障子を
開けると、めちゃくちゃいかがわしく
男と沙良が、くっついてる。
ていうか、胸さわってる。
なにこれ、幻覚?
「……なにやってるの?」
「れ、いちゃ …」
「沙良ちゃんの知り合い?」
男を、殺しそうな目で睨んでしまった。
沙良の手をとって、引き離す。
熱い。もしかして…お酒飲んでる?
「沙良、お酒…のんだの?」
「…うん」
「沙良、アルコールダメって
……わかってるよね?」
思わず声が大きくなる。
怒りを含んでる、と思う。
沙良の腕を掴む手に、
ひどく力が入ってしまう。
「ちょ…こんなとこで、
なにゴタついてんの、れい?」
みなみが出てきた。
「あれ、れ……沙良ちゃん…?!
え。なになに。れい?どーしたん?」
やたら軽そうな男は明らかに
みなみとわたしが並んだら…怯んだ。
でもしつこく、沙良に手を伸ばす。
「沙良は喘息持ちなんです。
…連れて帰るから触らないで」
「今晩は俺と沙良ちゃんデートなんですけどね。
てか、あなた保護者?なに?」
思わず足が1歩前に出る。
「……れい、落ち着きぃ」
顔色が変わったわたしに
みなみが声をかけてくれる。
でも……。
「れい、あと、任しとき。ほら、タクシー乗って。
はい、お兄さん面倒おおきくしないで。
沙良ちゃん、またね。はい、乗って。
はい、れいは落ち着いて!
今日のところは、おやすみ、な」
みなみは
わたしと沙良を
筋力でタクシーに押し込んだ。
住所を告げタクシーは走り出した…けど
すぐに長い信号につかまる。
…居心地が悪い…この感情。
はやく…走り去りたい。
隣で沙良は俯いてる。
いつもの、
可愛い言い訳も
泣きべそも、
冷静かつ単刀直入な説明も、
ない。
どうして?